転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~

「……受付は君か?」
「は、はい……ユフィと申します」

 ユフィ。
 その名を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなった。

「依頼を受けたい」

 依頼書を差し出すと、彼女は慌てて内容を確認し始めた。そして――

「あの……これ、すごく危険な依頼ですよ? お一人で行くには、あまりに……」

 彼女が、身を乗り出して俺を見上げた。
 その青みがかった澄んだ瞳には、純粋な心配の色が浮かんでいた。

(――心配? この俺を、か?)

 王宮では誰もが俺を「無敵の騎士団長」として仰ぎ、あるいは「野心溢れる第二王子」として警戒する。

 俺という人間の無事を心から案じる者など、一人もいない。

 彼女は俺の素性も知らない。
 つまり、ただの無謀な冒険者として、純粋に俺の身を案じている。
 凍てついていた俺の心が、急速に熱を帯びていく。

「問題ない」

 そう答えながら、俺は冒険者カードを提示した。
 Sクラス。最高ランクの証。
 彼女の目が驚きに見開かれる。
 その反応すら、愛おしかった。

「えっとこちらに……お名前をいただけますか?」

「レオン――だ。ただのレオンだ」

「レオンさん、ですね。かしこまりました」

 ペンを取った時、彼女の視線が俺の手に注がれた。
 無数の傷跡。
 剣を握り続けてきた証。
 死線を越えてきた勲章。
 彼女の瞳が、わずかに揺れた。
 署名を終えて顔を上げると、目が合った。
 その刹那、彼女の頬が鮮やかな朱に染まる。

(……可愛いな)

 不覚にも、そう思ってしまった。

「では、気をつけて。必ず、無事に戻ってきてくださいね」

 その言葉が、俺の心臓を直撃した。

「……ああ」

 それしか言えなかった。
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