転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~
その後の魔物討伐など、記憶にすら残っていない。
剣を振るっている間も、俺の脳裏にはあの亜麻色の髪と、潤んだ薄青の瞳が焼き付いて離れなかった。
夕方、報告のために再びギルドの扉を潜る。
「討伐を、完了した」
背後でガタイのいい冒険者たちが「半日で……!?」と騒いでいた気がするが、そんなことはどうでもよかった。
「す、すごい……! はい、報酬の金貨五枚です」
目を輝かせて見上げてくる彼女を前に、俺は危うく、その華奢な身体を抱き寄せてしまいそうになるのを必死で堪える。
もっと、彼女を見ていたい。
彼女の声を聞きたい。
帰り際、俺はたまらず立ち止まった。
何かを言いかけ、けれど、何を言えばいいのかわからずに言葉を飲み込む。
彼女がこちらを見ている。
俺は静かに背を向け、ギルドを後にした。
宿のベッドに横になっても、昂ぶる鼓動は一向に収まらない。
「……何をしているんだ、俺は」
王宮の喧騒から逃げて来たとは言え、名目上の任務がある。
国境の異変を調査しなければならない。
それなのに、頭の中は彼女のことでいっぱいだ。
あの笑顔。あの声。あの心配そうな眼差し。
「必ず、無事に戻ってきてくださいね」
その言葉が、何度も何度も胸の中で反芻される。
俺は生まれて初めて、敗北を知った。
これまで数多の戦場を駆け抜け、勝利を掴んできたこの俺が、名も知らぬ少女のひと瞳に、これほどまで無残に射抜かれるとは――。
「……明日も、行ってみるか……」
任務など二の次だった。
ただ、もう一度、彼女に会いたかった。