ブルー・ディスタンス~君の特別になりたかった私は、最初から君の特別だった。~

②-❺

「市乃瀬さん、ここ、プリント配って」
「あ、はい」

次の日から、私は徹底的に「壁」になることを決めた。
律くんの背中を見ない。
彼の匂いを意識しない。
詩織が彼の話をするときは、ただの「聞き手」に徹する。

授業中、律くんがふと後ろを振り返るような気配がしても、私は頑なに教科書から目を離さなかった。
彼が何かを言いたげに視線を彷徨わせていても、私は気づかないフリをして席を立った。

「諦める」というのは、彼を嫌いになることじゃない。
彼に関わるすべての可能性から、自分をシャットアウトすることだ。

席替えから三ヶ月。
季節はすっかり夏に向かっていた。
私の心は、冷たいブルーの氷に覆われたまま、完全に閉ざされてしまった。

もう、彼の声に耳を澄ませることも、その広い背中にため息をつくことも、終わりにしよう。
そう、心に誓ったはずだったのに――。
< 11 / 25 >

この作品をシェア

pagetop