ブルー・ディスタンス~君の特別になりたかった私は、最初から君の特別だった。~

③-❹

「そんなの……信じられないよ。だって、私、律くんと一回も喋ったことすらないんだよ……?」

私の声は震えていた。
諦めると決めて、一生懸命に心の奥に閉じ込めたはずの感情が、一一気に決壊して溢れ出しそうになる。

「喋ったことないのは、あいつも同じ。ヘタレなんだよ、あいつ」

夏美ちゃんは少しトーンを落として、優しく言った。

「入学式の日にさ、律、あんたに一目惚れしたんだって。廊下側の一番後ろの席で、静かにしてたあんたに。席替えで後ろの席になった時、あいつ家で大騒ぎしてたんだから。……なのに、急にあんたから完全にシャットアウトされて、あいつマジで死にそうになってる」

「入学式の、日……」

脳裏に、あの春の雨の日の記憶が蘇る。
窓際で本を読んでいた彼の横顔。あの日、彼と一瞬だけ目が合った、あの瞬間。
彼も、私を見ていたの?

「本当だよ。嘘だと思うなら、あいつに直接聞きな。これ以上あいつの愚痴を聞かされる私の身にもなってほしいわけ。……じゃ、私は先に帰るから。ちゃんと考えなよ、市乃瀬さん」

夏美ちゃんは私の肩をぽんと叩き、鞄を持って教室を出て行った。
静まり返った教室で、私は一人、立ち尽くしていた。
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