ブルー・ディスタンス~君の特別になりたかった私は、最初から君の特別だった。~

⑤ー❸

夏休みに入る直前、終業式の日の放課後。
私たちは、誰もいない夕暮れの教室にいた。

あの席替えの日から、何度も見つめ続けた窓際の席。
律くんはそこに立ち、窓の外を眺めていた。私はその隣に、そっと寄り添うように立つ。

「あのさ、璃子」

律くんが私の方を振り返った。
オレンジ色の夕光が彼の横顔を照らし、あの入学式の日よりも、ずっと近くで、ずっと鮮やかに私の瞳に映る。

「もう、後ろの席から見つめるだけなのは嫌だ。お前の避ける姿を見るのも、もう嫌だ。……これからは、ちゃんと俺の隣にいてほしい」

律くんの手が、私の手元へと伸びる。
細くて綺麗な、でも、男の子らしい少し大きな手が、私の手をそっと包み込んだ。

「俺と、付き合ってくれませんか」

まっすぐな、熱い眼差し。
もう、迷いなんてどこにもなかった。詩織への遠慮も、自分への言い訳も、全部吹き飛んでいた。

「……はい。私で、いいなら。……よろしくお願いします」

涙が、一滴だけ頬を伝ってこぼれ落ちた。
ぎゅっと握り返された手の温かさが、これが夢じゃないことを教えてくれていた。



夏休みが始まって一週間。
私たちは、いつもの4人で、ファミレスの席に集まっていた。

「はいはい、ごちそうさま! あんたたち、付き合い始めたからって、公共の場でイチャイチャすんじゃないわよ」

夏美ちゃんがストローを咥えながら、ニヤニヤとからかってくる。

「イチャイチャなんてしてないって……」
律くんが珍しくタジタジになりながら、ジュースを飲む。

「いいじゃん、夏美! 二人とも、本当におめでとう! 私、二人のキューピッドだから、今度美味しいもの奢ってよね!」

詩織は本当に嬉しそうに、満面の笑みでジュースのグラスを掲げた。
その瞳に、私へのわだかまりは一ミリも残っていなかった。

「ありがとう、詩織。本当に、ありがとう」

私が頭を下げると、詩織は「もう!水臭いって言ったでしょ!」と私の肩を小突いた。
大好きな親友と、頼りになる幼馴染。
そして、私の大好きな恋人。

私たちの「青い距離」は、たくさんの優しさに囲まれて、ようやく、幸せな居場所を見つけたのだった。
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