ブルー・ディスタンス~君の特別になりたかった私は、最初から君の特別だった。~

あとがき

本作『ブルー・ディスタンス~君の特別になりたかった私は、最初から君の特別だった。~』を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。作者の紫陽花です。

無事に璃子と律、そして詩織や夏美たちの物語を最後まで描き切ることができて、今はホッとした気持ちと、彼らの不器用な恋路をずっと見守ってきた寂しさが同居するような、少し不思議な感覚に包まれています。読者の皆様の目には、二人の「青い距離」が縮まっていく様子はどのように映ったでしょうか。少しでも胸がキュンとしたり、切なくなったり、温かい気持ちになっていただけていたら、作者としてこれほど嬉しいことはありません。

さて、この物語を書き終えた今、皆様にどうしても投げかけてみたい「問いかけ」があります。



「もしも、あなたの大切な親友と、好きな人が被ってしまったら……あなたなら、どうしますか?」



これは、本作の主人公である璃子が直面した最大の葛藤であり、この物語の心臓部分でもあります。

自分の「好き」という気持ちに素直になって、親友をライバルとして正々堂々戦うのか。それとも、親友との関係が壊れることや、親友を傷つけることを恐れて、璃子のように自分の気持ちにそっと蓋をして、一歩引いてしまうのか。

きっと、どちらが正しいなんて答えはありませんよね。どちらを選んだとしても、そこには言葉にできないほどの大きな勇気と、同じくらいの痛みが伴うはずです。

実は、このお話を書こうと思ったきっかけには、私自身のリアルな経験と、私の周りにいる大切な友達の存在が大きく関わっています。

ここで少し、私自身のプライベートなお話をさせてください。

私には、何でも話せる「親友」と呼べる存在が3人います。そのうちの1人が「心友」です。
自分でも本当に恵まれているなと思うのですが、この3人とは本当に仲が良くて、いつも私の心の支えになってくれています。ただ、私たちの恋愛事情はみんな驚くほどバラバラなんです(笑)。

3人のうちの1人には、今お付き合いしている大好きな彼氏がいます。のろけ話を聞くたびに私も幸せな気持ちになりますし、いつも「末長くお幸せに!」と全力で応援しています。
そして残りの2人(心友を含む)はというと、現時点では「恋愛に全く興味がない」というタイプなんです。恋バナをするよりも、趣味の話や推し活、みんなで美味しいものを食べに行ったりする方がずっと楽しい!という感じで、それはそれでいつも大盛り上がりします。

だから、今の私のリアルな生活の中では、ありがたいことに「親友と好きな人が被ってドロドロの三角関係になる」なんていう修羅場は起きていません。そこは「うん、私は大丈夫!」と胸を張って言える、とても平和で心地よい関係が築けています。

……ですが。
それはあくまで「親友3人」に限ったお話です。

これまでの学生生活や、もっと広い範囲での「友達」という枠組みで考えてみると、やっぱり「友達と好きな人が被る」ということって、人生の中でどうしても起こり得ることなんですよね。

実は、私も過去に経験があるんです。

かつて、私にも本当に友達と同じ人を好きになってしまったことがありました。
その時、私の胸の中に渦巻いていた感情は、まさに本作の主人公・璃子が抱えていたものと全く同じでした。

友達がその男の子の話を楽しそうにするたびに、胸の奥がキリキリと痛む感覚。私の方が先に好きだったのに、とか、私だって話しかけたいのに、とか、そんな醜い嫉妬心が頭をもたげるたびに、自己嫌悪に陥る毎日。

「友達を裏切りたくない。でも、自分の気持ちも嘘にしたくない」

毎日毎日、ベッドの中でスマホを見つめながら悩んで、ぐるぐると同じところを回り続けました。
そして、悩みに悩んだ結果、当時の私が選んだ道は、この物語の璃子と同じように「自分の気持ちを必死に抑えて、諦める」ということでした。

声をかけるきっかけを作らないようにして、彼を見ないようにして、ただの「クラスメイトのAさん」として振る舞う。
友達の恋バナには「頑張ってね」と笑顔で相槌を打ちながら、心の中ではひっそりと涙を流す。
その時の、胸がじりじりと焼けるような痛さや、自分の気持ちを無理やり押し殺す息苦しさは、今でも私の心にほろ苦い記憶として刻まれています。

だからこそ、本作を書いている時は、璃子の苦しさにこれでもかというほど感情移入してしまいました。
一度諦めようと決意した時の璃子の涙も、話しかけられないもどかしさも、全部あの時の私の心が叫んでいた声そのものだったのかもしれません。

でも、小説という世界だからこそ、私はあの時の私自身が救われるような、そして今まさに同じように悩んでいる誰かの背中を優しく押せるような、そんな結末を描きたいと思いました。

璃子は一度自分の気持ちを諦めましたが、3ヶ月後、律の幼馴染である夏美の言葉によって、世界が180度ひっくり返るような真実を知ることになります。
「律が最初から好きだったのは、璃子の方だった」と。

この展開を書いている時、私はパソコンを叩きながら心の中で「璃子、本当によかったね……!」と何度も叫んでいました。
現実の私の恋は、自分の気持ちを抑え込んだまま静かにフェードアウトして終わってしまったけれど、璃子にはその一歩先にある「奇跡」をプレゼントしたかった。そして何より、そんな二人を見守り、自分の失恋を受け入れながらも笑顔で璃子の背中を押してくれた詩織という、最高に優しくてカッコいい女の子の姿も、私の大切な友達たちの優しさを重ね合わせながら、一文字一文字大切に紡ぎました。

一度は諦めて作った「ブルー・ディスタンス(青い距離)」が、実は最初からゼロセンチメートルだった。
このサブタイトルに込めた想いが、皆さんの心に温かい光として届いていれば、これ以上の幸せはありません。

もし今、このあとがきを読んでいるあなたの中に、
「友達に気を使って、自分の好きな気持ちを隠している」
「自分なんて選ばれるはずがないと、最初から諦めて遠くから見つめているだけ」
という方がいたら、そっと伝えたいです。

あなたのその優しい気遣いは、決して無駄なんかじゃありません。誰かを想って悩んだ時間は、あなたをとても綺麗で、優しい人にしてくれています。
でも、ほんの少しだけ。もし少しの勇気が湧いたなら、自分の気持ちに素直になって、一歩だけ踏み出してみるのも悪いことじゃないかもしれません。
あなたの「ブルー・ディスタンス」の先にも、思いもよらない優しい真実が待っていることを、私は心から祈っています。

最後になりますが、この物語を形にするために、いつも温かいアドバイスと応援をくれた皆様、そして何より、最後までこの本を開き、璃子たちの恋を一緒に見守り、並走してくださった読者の皆様に、心からの感謝を捧げます。

皆様のこれからの日々が、お気に入りの本を開いた時のように、穏やかで輝かしいものでありますように。

また次の物語でお会いできる日を楽しみにしています。


2026.7.15
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