ブルー・ディスタンス~君の特別になりたかった私は、最初から君の特別だった。~

①ー❸

「璃子、聞いて……! 私、運命の出会いをしちゃったかもしれない!」

翌朝、教室に入るなり、詩織が私の両肩を掴んで激しく揺さぶった。
その瞳は、まるで少女漫画のヒロインのようにキラキラと輝いている。

「昨日ね、放課後にすっごくかっこいい男の子に助けられたの。同じクラスの、律くん! 私、一瞬で頭が真っ白になっちゃって……」

詩織の口から溢れ出る「律くん」という名前。
トクン、と私の心臓が嫌な音を立てて波打った。

「クールで、ちょっと冷たそうに見えるけど、すっごく優しくて、背が高くて……。思い出すだけで心臓がバクバクするの。璃子、私……律くんのことが好きになっちゃった」

詩織は本当に恋をしている女の子の顔をしていた。
嬉しくて、恥ずかしくて、世界が輝いて見えているような、眩しい笑顔。

「応援、してくれるよね……?」

小首を傾げて、純粋な瞳で私を見つめてくる親友。
私の胸の奥で、ドロリとした黒い塊が鎌首をもたげる。
(嫌だ。私も律くんが好き。席替えで近くになれて、毎日彼の後ろ姿を見てるの――)

そんなこと、口が裂けても言えなかった。
親友の純粋な恋心を傷つけたくない。何より、一度も律くんと話したことすらない自分が「好き」だなんて主張する勇気は、どこを探しても見つからなかった。

「……うん。もちろん、応援するよ」

引きつった笑顔で、私は人生で一番悲しい「嘘」をついた。
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