ブルー・ディスタンス~君の特別になりたかった私は、最初から君の特別だった。~
①ー❹
「律くん、おはよう!」
次の日の朝、詩織はさっそく行動を起こした。
律くんが席についた瞬間、彼の机の前まで行って、満面の笑みで挨拶をしたのだ。
律くんは一瞬だけ驚いたように目を見開いたけれど、すぐにいつもの涼しい表情に戻り、小さく頷いた。
「……おはよう」
「昨日のお礼、ちゃんと言いたくて。本当に助かったよ、ありがとう!」
「別に。通りかかっただけだから、気にしなくていいよ」
そっけない返事。けれど、詩織はまったくめげていない。
「それでも嬉しかったんだもん」とはにかむ詩織を、律くんはどこか戸惑うような、あるいは何かを考えているような不思議な目で見つめていた。
そのやり取りを、私は律くんのすぐ後ろの席で、教科書を開いたまま俯いて聞いていた。
(私は……まだ一度も、挨拶すらしたことがないのに)
目の前の律くんの背中が、昨日よりもずっと遠くに見えた。
詩織が話しかけるたびに、私の胸は細い針で何度も突つかれるように痛む。
嫉妬なんてしたくないのに。大好きな詩織を応援すると決めたのに。
「詩織は、すごいな……」
ぽつりと呟いた言葉は、チャイムの音にかき消されて、誰の耳にも届かなかった。
次の日の朝、詩織はさっそく行動を起こした。
律くんが席についた瞬間、彼の机の前まで行って、満面の笑みで挨拶をしたのだ。
律くんは一瞬だけ驚いたように目を見開いたけれど、すぐにいつもの涼しい表情に戻り、小さく頷いた。
「……おはよう」
「昨日のお礼、ちゃんと言いたくて。本当に助かったよ、ありがとう!」
「別に。通りかかっただけだから、気にしなくていいよ」
そっけない返事。けれど、詩織はまったくめげていない。
「それでも嬉しかったんだもん」とはにかむ詩織を、律くんはどこか戸惑うような、あるいは何かを考えているような不思議な目で見つめていた。
そのやり取りを、私は律くんのすぐ後ろの席で、教科書を開いたまま俯いて聞いていた。
(私は……まだ一度も、挨拶すらしたことがないのに)
目の前の律くんの背中が、昨日よりもずっと遠くに見えた。
詩織が話しかけるたびに、私の胸は細い針で何度も突つかれるように痛む。
嫉妬なんてしたくないのに。大好きな詩織を応援すると決めたのに。
「詩織は、すごいな……」
ぽつりと呟いた言葉は、チャイムの音にかき消されて、誰の耳にも届かなかった。