ブルー・ディスタンス~君の特別になりたかった私は、最初から君の特別だった。~

②-❶

「ねえねえ、律くん! この前の数学の課題、どこまでやった?」

詩織の明るい声が、教室の窓際に響く。
もうすっかり、詩織は彼を「律くん」と呼ぶようになっていた。
その響きが私の鼓膜を震わせるたび、胸の奥がキュッと締め付けられる。

「……半分くらい」

律くんはいつも通り短い返事だけど、詩織の言葉を無視することはしない。
すぐ後ろの席でノートを広げている私は、息を潜めて二人の影を見つめていた。

(私は、今日も一度も目が合っていないのに……)

「そっか! じゃあさ、放課後もしよかったら図書室で――」
「悪い。今日は用事あるから」

さらりと断る律くん。
それでも諦めずに「じゃあ明日ね!」と笑う詩織は、眩しくて、私とは正反対だった。
席が一番近いのは私なのに、心は宇宙の端と端くらい遠い。
私はただ、シャープペンの芯をノートに押し付け、黒く濁った文字を塗りつぶし続けた。
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