花に溺れ、香りに溶ける
千夏さんの視線の先を追うと、会場の中心に、碧斗さまの姿が見えた。招待客に囲まれながらも、涼しい顔で挨拶をこなしている。
その表情は、いつも私に向けるものとはまるで違う、完璧に整えられた仮面のようだった。
「ほら、あれが月森流の跡取りとしての碧斗くんの顔。美寿さんの前でだけ違う顔してるって、この前も言ったでしょ」
千夏さんがそう言って笑うのと同時に、碧斗さまがこちらに気づいて、視線を寄越した。
一瞬だけ、その完璧な仮面の下に、ふっと柔らかい表情が滲んだのが見えた。
「ほらね? 本当にわかりやすいなぁ」
千夏さんが得意げに囁いた。
「美寿さん、よく来てくれたね」