花に溺れ、香りに溶ける
声をかけてきたのは、碧斗さまによく似た、けれどもう少し柔らかい雰囲気を持つ壮年の男性だった。
「お久しぶりです。郁斗さま」
この方は国宝級華道家で雅号を月森耀壱という月森流華道家元である。
そして、碧斗さんのお父様だ。
「会うのは一年振りかな。英那さんに似て、綺麗になったね。急な話だったのに受け入れてくれてありがとうね」
「はい、こちらこそありがとうございます」
「碧斗から、随分と話は聞いているよ。……あの子があんなに必死に何かを願うのは、生まれて初めてだったからね。よく覚えている」
「あの……もしかして、婚約のことですか?」
郁斗さまは、悪戯っぽく目を細めた。