花に溺れ、香りに溶ける
「炭団を用意しました」
深く丁寧におじぎをする。頭を上げると、お客様たちが静かに立ち上がる準備を始めるのが見えた。それをしっかり見届けてから、私はまた静かに立ち上がり、ふすまを元通りにそっと閉めた。
ふすまを閉めきると同時に、張りつめていた空気が少しゆるみ、私は小さく息を吐いた。それからすぐに向きを変えて、裏口のほうへ回った。
そこには、私の緊張に気づいたように優しくほほ笑む矢花さんがいた。
「蓮水先生、改めまして。よろしくお願いします」
「はい。矢花さん。ご迷惑をかけるかもしれませんが……こちらこそよろしくお願いします」
「蓮水先生なら大丈夫ですよ。さあ、行きましょう」
私たちは無言で小さくうなずき合い、それぞれ別の場所へ向かった。
そして、参加者が部屋に入ってくる。
お客様たちはまず仮の席に、代表の人から順に静かに座っていく。父や兄は私に個人的な視線を向けることなく、ただ静かに自分の席についた。碧斗様は、こちらを見つめていたけれど……私は今、香を焚く係なのだから気にせず全員が座ったのを確認した。
すると、参加者みんなで礼をした。
私は裏口のふすまを開けて、そこでおじぎをすると下の人が座る側から入って道具棚の前に座った。