花に溺れ、香りに溶ける



  ――碧斗side――



 時間は少し戻って――待合の間にて。
 香席の時間が近づき、今日の参加者たちがぞろぞろと集まり始めた。

 今回参加するのは、母以外にもたくさんいる。母のほかに、月森家からは俺と父さん、美寿の父である佐山流香道の家元、そして次の家元になる予定の兄、昨夜のパーティーに参加していた千夏を含めて、十人くらいだ。

 俺は正直、少し嫌な気持ちにすらなっていた……母がここまでやるとは思わなかったからだ。



「……碧斗、そんなに心配か?」



 急に話しかけてきたのは、隣に座っていた父だった。


「それは……心配ですよ。美寿は、人前に出るのが苦手だと思いますし」


 俺は思ったことをそのまま口にした。だって彼女は、人前に出ると緊張してしまうと言っていた。彼女の実力がどれくらいなのか、俺はよく分かっていない。見たことがないんだから当然だけど……とても心配だった。


「……大丈夫ですよ、碧斗くん」


 そう声をかけてきたのは、美寿の父であり佐山流香道の家元である佐山國宗さんだった。彼は俺の父と母にあいさつをしていた。


「で、でも」

「あなたが娘のことを大切に思ってくれていること、親としてとてもうれしいです。普段のあの子は少し頼りない感じですが、これから香元をつとめるのは、三代目・佐山蓮水なんですよ」

「……三代目?」


 俺が聞き返すと、美寿の父は、さっきとは違う「家元」としての顔を見せた。





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