花に溺れ、香りに溶ける



 特に、足の運び方や一つ一つの動きはよく見られる。動きが途切れないように流れるように動くこと、そして呼吸と動きを合わせて着物の前の合わせ目がきれいに見えるように気をつけることが大切だ。

 いつもしていることを、一つ一つ丁寧にこなしていく。

 正座をして背筋をまっすぐ伸ばし、道具箱を自分の正面に静かに置いた。道具を置いたあとは、両手の指をきれいにそろえて太ももの上に置く。

 私が香の準備をしている間に矢花さんは、今日おこなう香りの遊び「寝覚香(ねざめこう)」の記録用紙を取り出し、きれいな字で書き始めた。

 まず、下に敷く布をきれいに伸ばして自分のひざの前に広げる。そして道具箱は、その布の右手前に並べて置く。箱から布の上へ、道具を順番に並べていく。正面から見て左右対称になるように、しかも使いやすいように並べるのがポイントだ。

 布の真ん中には、香りをたく香炉(こうろ)を置く。あわてないように、道具は一つずつ両手で丁寧に扱い、置き終えてから次の道具に手を伸ばした。



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