花に溺れ、香りに溶ける



 私はその様子を見ずに背筋をまっすぐ伸ばし、呼吸を整えて、できるだけ気配を消すように座っていた。
 この並び方を考えたのは私だが、違和感なく座れるようにしてくれたのは矢花さんだ。最初に兄がやってくれることで、私が心配してお客さんの様子をキョロキョロ見なくてすむからだ。目線を自分の前に静かに落としていられる。

 だから私は、香りに集中できるように、静けさを守る役目として座っていた。

 その後の席順も、矢花さんがよく考えてくれた。兄の次は碧斗様のお母さんの百合乃様、その隣に碧斗様、そして千夏さん、華道の先生方、昨日の招待客の方。

 その後に碧斗様のお父さんの郁斗様、さらに招待客が2人ほどと最後は私の父だ。


 とてもやりやすい。


 香炉が戻ってきたら、2つ目の香り【鹿】を箸で取り、温まった銀葉の上に載せた。


「2つ目、【鹿】でございます」


 香炉がまた回ってきて、3つ目の【虫】が終わると香炉を布の真ん中に置く。はさみで灰の山の上の銀葉をつまみ上げ、使い終わった香木を箱のふたの上に滑らせて落とす。銀葉はきれいに拭いて、新しいものを用意し始めた。




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