花に溺れ、香りに溶ける



 上客である兄が聞いたら、次の人に回す。受け取った人も、次の人に回すときに同じように「本番、1回目です」と小さな声で言いながら、リレーのように回していった。
 すべての香りが回り終わり、お客さんたちは自分の答えを紙に書き終えた。

 書いた紙を小さく折りたたみ、代表の人のところに集めて矢花さんに渡す。矢花さんは1枚ずつ開いて、「佐山煌太(さやまこうた)様の答え、1回目は碪、2回目は枕……」と美しい声で全員の答えを読み上げ、記録用紙に書き込んでいった。

 記録係が正解と答えを照らし合わせて、点数をつける。全問正解だと「寝覚」、全問不正解だと「夢」という言葉が記録用紙に書かれる。

 矢花さんは、書き終えた今日の成績表をきれいに折りたたんで、両手で代表の人の前に差し出した。

 代表の人は成績表を受け取り、頭の上に一度かかげてから広げて、今日みんなの成績を静かに見た。そのあとは順番に隣の人へ回した。

 全員に回り終わると、兄が香を炊いた私に向かって「すばらしいお香でございました」と感謝の言葉を言い、みんなで深くおじぎを交わした。

 あいさつが終わると、私は道具を出したときと逆の順番で一つずつ丁寧に箱にしまっていく。
 最後まで気を抜かず、下に敷いていた布をきれいにたたんで箱の上に載せ、両手を太ももの上に戻して一息ついた。

 道具箱を正しい持ち方で胸の高さに持ち、静かに立ち上がる。
 決まった歩き方でふすまの前まで進み、座った。矢花さんも私が立つのと同時に、自分の道具を持って静かに立ち上がり、私の後ろに続いてふすまの前に座った。

 ふすまの前に座ったら、部屋の中に向かって最後のおじぎをする。お客さんたちもそれに合わせておじぎをした。
 そのあと、3回の動きで音を立てずにゆっくりとふすまを閉めきった。





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