花に溺れ、香りに溶ける
それぞれの、思い。
【碧斗side】
月森家に帰ってきてから、碧斗はずっと落ち着かない気持ちだった。美寿の一つ一つの動きが、まだ目に焼きついて離れない。
あの静けさ、あの完璧さ。
誰にもまねできない、彼女だけの雰囲気。
ずっと、か弱くて守ってあげたい女の子だと思っていた。でも今日、あらためて思い知らされた気がした。彼女は自分が守るような存在ではないのかもしれない、と。
「碧斗、少しいいかしら」
夕食が終わったあと、母が声をかけてきた。書斎に入ると、母はいつになく真剣な顔で碧斗を見つめた。
「今日の美寿さん、どう思った?」
「……すごかったです。素晴らしかった。初めて見ました。あんな彼女は、見たことがない」
「そうね。私もそう思ったわ……だからこそ、聞きたいの。初めてパーティーで会った時とは全くの別人で」
百合乃はまっすぐに碧斗を見た。