花に溺れ、香りに溶ける




 【煌太side】


 美寿の香席が終わった夜、煌太は一人で稽古室に残っていた。

 誰もいない道場に、香木の香りだけがかすかに残っている。畳に座り込み、香炉の跡が残る畳の目をぼんやりと眺めた。

 今日の美寿は、完ぺきだった。いつも通り……。


 ――いつも通り、なのが恐ろしい。


「……かなうわけ、ないよな」


 誰に言うでもなく、つぶやく。




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