愛しいひと――く ち な し身代わりの恋(番外編)
 アユミはやけに積極的だった。
 二人で会うのを初めてなのに。
 飲んでいた繁華街の裏にある、くたびれたホテルを指差して言った。

「私、こういうところ、行ったことなくて」

 飲みすぎた俺は、普段なら断るこの手の誘いを無下にあしらうことができなくなっていた。

「……ラブホじゃない所でしてたってこと?」

「ううん 彼氏できたことないの」

「……マジで」

重い女。
 でも。

「私は、ずっと大橋忠延が好きだったから、それ以外の人に ″初めて″をささげるなんて考えられない」


俺の ″好きな顔″に言われると、悪い気はしなかった。

「とりあえず、酔い、醒まそ」


 アユミに手を引かれて、ラブホに入ってしまった。
< 18 / 60 >

この作品をシェア

pagetop