愛しいひと――く ち な し身代わりの恋(番外編)
 ハッと目を覚ますと、梓が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。

「……あ、いや」

 身体が汗で濡れているのがわかる。

「うなされてたわよ」

「なんか、寝苦しくて……」

 言いながら、胸のあたりを見ると、ちょうど心臓部分に楓が頭を乗せて寝ていた。

「いつの間に……」

 悪夢の原因はこれか。

「やっぱり楓もあなたと寝たいのね」


 梓がクスリ、と笑った。

「……今、何時?」

「3時よ」

「微妙な時間だな」


 俺は、起き上がって、まだ薄暗い部屋を見回し、ある事に気付いた。
< 58 / 60 >

この作品をシェア

pagetop