愛しいひと――く ち な し身代わりの恋(番外編)
 バッグに仕舞っていたはずの指輪ケースが飛び出していた。

「もしかして、中、見た?」

梓が開けたのか?

 いや。そんなことするタイプじゃない。

「あなたのバッグを? 触ってないわよ」


 梓が少しムッとして、俺の視線の先を追った。

「あ、いい、気にしないで」


 渡し損ねた指輪なんて見られたくない。梓を引っ張り、強引に寝かせた。

「変な人ね」


 横で息をついて梓が呟いている。

「……」


 プレゼントなんて、柄にも無いことするもんじゃないな。そんな自分の滑稽さに、苦笑いしていると、

「お……とうさん」

 楓が寝言を言った。

「え」

 俺と梓は顔を見合わせた。

「お……とうさん、かえでにも何かちょーだい……、キラキラしたの、買ってきてぇ……」

 むにゃむにゃと、可愛く、何となく先が思いやられるような寝言だった。


 俺が悪夢を見ている間に、指輪を見つけたんだろう。


「お父さんなんて、教えてないのにね」


  梓が笑っている。

「どうしたんだろうな」

「血の繋がりって、本能でわかるのかもね」


 外の嵐は、いつの間にかおさまっていた。
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