🌸さくらのねがい🌸

ずっと内緒にしていたこと

家に帰って、洗面所で鏡をみると不細工な自分が写っている。

“あの子”と会って取り乱してしまってまた海斗に迷惑をかけてしまった。



「はぁ。」



ひとりになってしまった家でひとりため息を着いた。



「なにもしたくない。」と独り言を呟いて、ソファに横になる。




ウトウトと眠りにつきそうになってしまったその時、スマホが鳴った。

画面に表示された“飯田雄介”の文字に震える手で着信を取った。




「は、い。」

「咲桜ちゃん、いつもの場所。」



そう言われていつものように電話は切られた。




海斗は、明日香ちゃんと雄介くんには会ってほしくない。と言う。
けど私は雄介くんと毎月、月命日に会っていた。



私は着替えて、伸びた前髪をピンで留め、黒縁眼鏡を外す。
そして指定された“いつもの場所”の繁華街に向かった。




繁華街に入ると毎度独特な匂い、香水の匂いだったり、お酒の匂いだったり、
いろいろの匂いが混ざっている。



「気持ち悪い…」いつもはそうならないのに吐きそうになりながら誰とも目を合わせず進んでいく。



待ち合わせ場所の、ホテル街の入り口に着くと先に彼は立っていた。





「顔色悪いけど、てか目、赤っ。」と心配するそぶりをする彼。

「なに、明日香にでも会った?まあいいや。行こう。」と私の返事を待たずに
いつものホテルへ入る。




部屋へ入ると雄介くんはいつも「シャワーあびて」と言って私を先にシャワーを浴びさせる。




私が終わると、雄介くん。そして私を無心で抱く。





あの事故が起きた後、私は咲希ちゃんの身代わりになった。



メディアでは咲希ちゃんが私を覆い被さるように亡くなった。と報道された。



彼に「お前が死ねばよかったんだ。」とあと追って死ぬんじゃないかと思うくらいに苦しそうな表情で言われた私。



「私が咲希ちゃんの代わりになるから、そんな顔しないで。」と、
私を庇わなければ生きていたかもしれない咲希ちゃんを彼から奪ってしまった私なりの償いだった。



初めてキスをしたのも、初めて誰かとつながるのも。
この人が初めてだった。好きでもない人との最悪な初めて。




彼は私を抱くことで彼女を失った悲しみ、寂しさは埋められているのだろうか。


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