さくらのねがい【完】

***


「宮下さんいるの珍しいね。」


「うん、初めて来たからちょい緊張。」



新歓が行われる居酒屋の前で橋本くんに話しかけられた。



「今まで来なかったのになんで急に?」


「ゆりちゃんに誘われてたし?たまにはね〜」


「咲桜は今日から飲み会解禁だからねー。」


「ふーん。」



もちろんゆりちゃんと隣同士で座るはずだったのに、なぜか私の隣には橋本くんがいた。



「なにのむ?」


「烏龍茶にしようかな。」


「ノンアルなの?ここ大丈夫だよ。未成年でもだしてくれる。」


「それ大丈夫じゃないでしょ、私、3月うまれなんだよね。」


「へー、そうなんだ。まだまだじゃん。
オレは来週だから四捨五入ってことで、内緒ね?」



橋本くんはハイボールを注文していた。



「乾杯しよー。かんぱーい!」と先輩の合図で乾杯をして新歓が始まった。



「ゆりのが隣に居なくて心細い?」


「うん、超心細い。」





烏龍茶をひとくち飲んだ。

ん?なんか苦くない??




「宮下さん地元なんでしょ?」


「うん、ここ落ちたら就職しようと思ってたんだよね。」


「え!?まさかとは思うけどここ以外受験してないかんじ?」


「まさかー、一応私立何個か受けたけど、合否に関わらず行かなかったと思うよ。
私には国立の大学しか行く選択肢ないし。」


「へー。でもよかったね合格して、やりたいことやれてる?」


「うん、やれてる。だからほんとによかった。ここ来れて。」





人見知りの私だけど何故かペラペラと話せてしまうのは橋本くんの人柄?




「地元、遠いの?」


「遠いね。ホームシックよくなる。」


「仲いんだね、ご家族と」


「うん、仲良いね。宮下さんも仲良いでしょ?」


「うん、仲良いよ。」



私の本当の家族はもういないけど、大好きな人の家族がいる。



「大切にしたい。」



大切にしたい、大事なひとたちのこと。




「宮下さん、大丈夫?」


「ん?」


「顔、真っ赤だよ、暑い?」


「暑いかも?」



体がぽかぽかして少し暑い気がする…



「咲桜〜、どー?初めての飲み会たのしー?」



ゆりちゃんが隣に来てくれた。



「うん、意外と楽しいかも?」


「よかったー、あれ、結局ノンアルじゃないんだー。」


「うん?ノンアルだよ、烏龍茶だし。」


「ん?これウーロンハイじゃない?」とゆりちゃんが私のグラスを持ってひとくち飲んだ。



「うん、ウーロンハイだね。ストロー刺さってないし。
しかも濃いめだし。」


「うそ!?」


「どーりで顔赤い訳だ。」


「苦いし、いつも違う味だと思った…、外で顔冷やしてくる…。」


「私も行く「ゆりの〜!」


「ゆりのいいよ行って、オレが一緒にでるから」


「じゃあよろしくー。」




外にでると春の夜風が気持ちいい。




「ごめん、気づけなくて。」


「ううん、私が気づかなかったのが悪いよ。戻ってて、大丈夫だよ。」


「戻らないよ、俺、ずっと宮下さんと話してみたかったんだよねー。」


「なにそれー、変なのー。私ただの凡人だよー。」


「真面目そうなのに意外と抜けてるとこあるよね。」


「あはは、よく言われる、鈍感って。」


「確かに、鈍感は言えてる。」




お酒の力ってすごい、たった1杯しか飲んでないのに。


普段だったら人見知りして絶対こんなに話せない。




「このままふたりで抜けない?違うお店行こ?」


「ううん、行かない。」


「そこは行くって言うとこだろー。」


「行かないよ。嫌な気持ちになるようなことしないって決めてるから。」


「彼氏いるんだ、残念。長いの?」


「知り合ってからは長いね。付き合ったのは2年前とか?」


「十分長いじゃん。馴れ初め聞かせて。」




橋本くんと海斗との話をしていたら、あの私の大好きな声が聞こえた。



「あれ?咲桜?」


「海斗?この辺だったの?」


「咲桜こそ。あ、誰…?」


「同じサークルの…」と言いかけると海斗が私を抱き寄せた。



「近寄らないでくださいよ。オレの彼女なんで。」と怒っているっぽい。





< 129 / 134 >

この作品をシェア

pagetop