死神の旦那様は、花嫁菓子しか食べられない
「ただいま戻った」
その時、台所に朔夜が入ってきた。
「おかえりなさいませ。お迎えもせず、申し訳ございません!」
鷹宮が頭を下げ、朔夜の元へ近づく。
「騒がしかったな。何かあったのか」
「ついに小春様が『酸』を発見したのですよ!」
志乃が笑みを浮かべて報告する。
「ほう。それはすごいな」
朔夜が小春を見つめてそう言った。
小春は恥ずかしそうに視線を下げる。
「志乃さんがヒントをくれたので。試しに合わせたら……ラムネの弾ける炭酸が再現できたんです」
そう言って、材料の入った乳鉢を朔夜へ掲げた。
「よく見つけたな」
「朔夜様も食べてみてください」
小春が差し出した匙を受け取り、朔夜は粉を掬って口に入れた。
「ぱちっ」
小さく弾ける刺激に、朔夜の目が大きく開いた。
「……!」
小春が息を飲む。
「……なんだ、これは」
もう一度、舌で転がす。
そして、静かに笑った。
「……あの日のラムネだ」
そのどこか可愛らしい反応を見て、小春はつい小さく笑いを漏らす。
「縁側で飲んだラムネの炭酸……そのものです」
小春が噛み締めるようにそう言う。
朔夜もふっと息を吐き、頬を緩めた。
「そうだな」
小春は上目で朔夜を見る。
「朔夜様、ついにラムネの材料が揃いました。あとは」
他の三人の視線が小春に集まる。
「まだ、何か足りないので?」
鷹宮が尋ねる。
「繋ぎ、です。水を加えると、そこで炭酸が逃げてしまいます。だから乾いたまま固められるものが必要なんです」
小春は眉を寄せ顎に指を添える。
その真剣な様子が面白くて、朔夜は思わず吹き出してしまった。
「まるで科学者だな」
「私、真剣ですよ」
口を尖らせる小春に、今度は鷹宮と志乃も笑い出す。
「この笑いは賞賛ですよ。その真剣さが胸を打つのです」
鷹宮が補足する。
小春はぽっと頬を赤らませた。
「あ、ありがとうございます。では、今日からは繋ぎ探しに進めますね!」
ぐっと拳を握る。
「期待している」
朔夜の視線は、小春から一度も離れなかった。
その眼差しが嬉しくて、小春はもう一度強く拳を握る。
(必ず完成させます。朔夜様が笑ってくださる、その日のために)