冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい


(そんな……)

 確かに――恭司が女性と一緒に食事をしている姿だった。
 彼が昨日来ていたスーツで間違いない。
 美桜の瞳が涙で潤む。

(恭司さん、私と別れた後に、別の女性と会ってたのかな?)

 美桜はシュンと俯いてしまった。
 なんだか気分が上がらない。
 黒猫ミオとの世話を通じてだいぶ距離が近づいたような気がしていたのだけれど……。

(……浮かれすぎていたのかも)

 そもそも分不相応だと自分で分かっていたのに。

「いよいよ結婚か、まあ、めでたいな」

「事業拡大のためになら結婚するんだろう? 相手は旧華族の……」

 それ以上は耳に入ってこなかった。
 男性職員たちの会話を耳にして塞ぎこんでしまった。

『ちゃんと面倒を見てやるって話してただろう?』

 ――面倒を見る。
 そう、恭司は面倒を見るとしか言ってこなかった。

(なんだろう、勝手に恋人だとかになれるのかなって浮かれてしまってた。分不相応な考えだったな。恭司さん、お金持ちだし、愛人を別宅で囲うとか、そんなつもりだったのかな……?)

 もしくは……。

(マンションの見学とか、縁談相手との予行演習だったなのかな?)

 考えれば考える程、悪い方向にしか物事を考えられなくなってくる。
 その時。
 ピコン♪
 SMSメール通知が鳴った。
 送信先は――。

(恭司さん……!)

 なんて書いてあるだろうか?
 先ほどの女性の姿が脳裏をチラつく。
 震える指先でメールをタップする。
 ドキドキしながら開封すると……。

『お前に似た猫の菓子が売ってあったから買った。夜に渡す』

 画面をスクロールしたのだが……。

(これだけ……?)

 何回かタップしたが、それだけのようだった。
 
(……他の女性と会っているなら、こういうメールは送ってこない?)

 ひとまず今晩は会えるようだ。
 美桜は自分自身を奮い立たせる。

(噂に惑わされちゃダメ。恭司さん、縁談は全部断っているって言ってたもん)

 本人に直接話を聞いたわけではないのだから、先程の縁談話だって信じるべきではないだろう。

(そうよ、噂を鵜呑みにしちゃダメ。恭司さん本人からちゃんとお話を聞かなきゃ)

 自分だって噂で嫌な目に遭った経験があるのだ。
 こういう時こそ冷静に、ちゃんと本人の言い分や周囲の反応などを情報収集すべきなのだ。
 総合して判断しないと――絶対に良くない結果になる。
 夜まで仕事に集中しよう。
 ミオが心の中で決意した、その時。

 ~♪~♪
 
「電話?」

 今度は美桜のスマホが鳴り響きはじめた。
 こんな時に誰かと話したくなかったが……。

(誰? もしかして恭司さんかも?)

 期待に胸を弾ませつつ、着信を見れば……。

「お父さん……?」

 父からの電話だった。
 この数か月は着信拒否していたのだが、数日前から解除していたのだ。
 ちょうど恭司から過去の話を聞かされた後、「あんたのとこ、電話連絡できる親がいるなら、話し合う余地はまだあるかもな」と言われたのがきっかけで解除したのだ。
 年末年始だって帰るつもりがなかったのだが、恭司にそんな風に言われていたので、少しだけ帰省しようかどうかも迷っていたのだ。

(解除してすぐ、こんなに早くかかってくるなんて……)

 出ようか出るまいか迷ったが、なかなか通知が消えてくれない。
 ここで出なくても、また何度もかかってくるかもしれない。
 母親が急病だったりしても困る。
 勇気を出して、美桜は電話をとることに決めた。

「はい、美桜です」

 声が人知れず震えた。
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