冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
見上げると、そこに立っていたのは……。
「ああ、美桜ちゃん、待ってたで」
「新宮部長」
現れたのは、新宮部長――近々社長になるようなので、新宮順一その人だった。
先日の一件や父からの電話の件もあるので、美桜は少しだけ身構えてしまった。
「お父さんから電話がなかった?」
順一の問いかけに対して、美桜は警戒しつつ答えた。
「ありました」
すると。順一が喜々として語りはじめた。
「それやったら良かったわ、どう? 粋な計らいやったやろう?」
美桜は首を横にフルフルと振った。
「あれ? お気に召さんかったかな?」
「……はい」
順一に怯む様子はない。
「美桜ちゃん、ええ子やから、俺からのお願いだけやなくて、親御さんからも言うてもろうたら、縁談話も断れへんやろうなって思たんよね」
意気揚々と語る彼に対して、美桜は少しだけ不快感を覚えた。
確かに優柔不断なところもあった。だけど、それは少しだけ前の自分だ。
順一のことをまっすぐに見据えるとキッパリと答えた。
「新宮部長、私は貴方とは結婚するつもりはありません」
すると、順一が片眉を吊り上げた。
「へえ、そうなん? 理由は?」
「理由って」
「僕と結婚したくない理由や。美桜ちゃん、別に僕のこと、嫌いやないよね?」
順一が笑顔で話しかけてくる。
「そんなの……私は新宮部長のことは子どもの頃から慕ってはいますけど、恋愛感情ではなくって……」
「そんなら、全然ええやん。結婚なんてそんなもんやって。最近はだいぶ個人の自由やって言うてるけど、結局少子化進んだだけやん。家同士の結びつきをようするって目的で結婚して子孫増やすんも悪うないとは思わへん?」
「ですが、私には貴方と結婚するつもりはないんです。だって、私は……」
恭司の姿が脳裏に浮かぶ。
最初は――嫌なことを忘れたくて、いつもと違うことをしたら、自分が変われるんじゃないか?
そんな自己中心的な気持ちで彼に身体を委ねたところが全くなかったかと言われれば嘘になる。
だけど、一緒に過ごした時間はそんなに長くはないけれど、恭司の優しさや孤独に触れてどんどん惹かれていった。
恭司が美桜のことをどう思っているのかは分からないけれど、それでも、美桜の胸の内のほとんどを今となっては恭司のことが占めている。
「私は……好きな人がいるんです。なのに、あなたとは結婚なんて出来ません」
しかしながら、美桜の主張を順一が遮ってくる。
「ふうん、美桜ちゃんの好きな人って、恭司兄さんのこと?」
美桜が頷く前に、順一が話を畳みかけてくる。
「もしも恭司兄さんと出会ってなかったら、結果は変わっとったんかな?」
「え?」
「恭司兄さんのことがなかったら、美桜ちゃん、俺のプロポーズにはいって答えてくれてたんちゃう?」
「それは……」