冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
ドクン。
「美桜ちゃん、企業スパイか何かやと思われてん、だから近づかれたんとちゃう?」
恭司から――父の職場まで調べられていたことを思い出す。
だけれど、美桜のことを疑ってきているようなそぶりは見せてこなかった。
「私は恭司さんの役に立つような情報は持ってなくって……」
「やったら、あれや。僕が美桜ちゃんのこと好きなの知ってて、わざと近づいとるんや」
「そんなはずはありません。私たちはたまたま……ドイツで出会ったん……です」
なんとなく歯切れの悪い答えになった。
「そうなん? 美桜ちゃんが就職活動したのはいつなん? ドイツに行った後なん?」
「辞めてしばらく経った頃で、ドイツに行く前でした」
「やったら、ほら、あの人、美桜ちゃんが自分の会社受けてるって知ってて、近づいとるんちゃう? 履歴書に写真載ってるやん。そもそも僕と美桜ちゃんも小さい頃から知ってんねんけど……恭司兄さんだって美桜ちゃんのことを知ってんねんで?」
「あ……」
恭司が美桜のことを元々知っていた――?
「恭司さん、そんなそぶりは全然なかったですし。それに、私に近づくメリットはないはずで……」
「美桜ちゃん、自分にあんまり価値を感じてないのは可哀そうやね。少なくとも、恭司兄さんの毒牙にかかって、僕も君の父さんもショックなんやけど。それに、君をつかって僕たちのことかき回して、恭司兄さんは自分の思った通りに話を進めることが出来とるんやし……」
「どういうことですか?」
順一がどこか遠くを見つめた。
彼の視線の先、月が昇りつつある。
「あの人、美桜ちゃんが思うてる以上に冷たい男なんよ。人を人とは思うてへん。利用できるものは何でも利用する。歪んだ支配欲の持ち主やから、僕が大好きな美桜ちゃんに手を出して愉悦に浸ってる。マジでクズや」
「そんなことは……なくって」
だがしかし、うまく言い返せなかった。
「そんな風に断言できるほど、長くは過ごしとらんやろう? そういえば、昼のWEBのニュースは見たん?」
「……京都で女性と食事をした話は見ました」
「僕と婚約破棄した華族令嬢なんよ。あの子の生家も大きな財閥でな。あっちと手を組めば、俺たち新宮家を潰せるからな。そもそもあのご令嬢、僕やのうて、恭司兄さんのことが好きやったからね。美桜ちゃん、捨てられるに決まってるやん」
「そんな……ことはなくて……」
なんとなく具合が良くないせいもあって、うまく反論が出来ない。
「まあ、さすがに僕も馬鹿やない。親父には色々伝えて、手は打ってるから安心してや。恭司兄さんのおかしな思惑なんて、新宮グループの力をもってすれば、塵に等しい。それでな、本題に戻るけど……」
そうして――順一が喜悦に歪んだ表情で美桜のことを見つめてきた。
「なあ、僕と結婚してえや、美桜ちゃん。やないと――恭司兄さんを会社ごと潰すで?」
美桜は――決断を迫られたのだった。