冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
――美桜の知る穏やかな雰囲気の順一に戻った気がする。
少しだけ和やかな雰囲気が二人の間に流れる。
(今がチャンスかも……)
美桜は一度だけ唇を噛み締めると、困ったように笑いながら返事をした。
「ええっと、ほら、会社の色々とか全然分かってないような人なので、新宮部長と結婚してもご迷惑をかけるだけなんですよ。それに恭司さ……いいえ、御影社長とだって同じです。私は社長夫人になれるような器の持ち主ではないんです」
「ふうん?」
「そもそも私が恭司さんのことを勝手に好きなだけで、恭司さんの会社に嫌がらせをしたって意味がないんですよ」
美桜は心の中で祈りを捧げた。
(お願い、これでどうにか諦めてもらえたら……!)
すると。
「まあ、五十点ってとこやね?」
ポツリ。
順一が呟いた。
「え?」
「美桜ちゃん、演技がそんなにうまくないから女優さん目指すのは辞めたがええで。君がちょっとドジなのは知ってるし、パッと見頭悪そうな言動が多いのは知ってるけど――さすがに会社がつぶれる理由が分からんほど馬鹿やないのぐらい、僕も知ってる」
美桜が言葉に詰まった。
「あとな、僕の説明が悪かったんや。反省しとる」
「え?」
「美桜ちゃんと結婚できてもできなくても恭司兄さんの会社を潰すつもりなんや」
「そんな……」
「やけど、美桜ちゃんが僕と結婚するって決めてくれるんなら、恭司兄さんの会社を潰すのは辞めようかなって」
美桜はぎゅっと目を瞑った。
(どうしよう……)
――恭司がせっかく築き上げてきた会社が困ってしまうのは嫌だ。
けれども――。
(覚悟を決めるしかない。私が我慢して新宮部長と結婚しさえすれば……丸く収まるのなら……)
――全身の筋が強張っていて、みぞおちに鉛か何かが乗ったかのような感覚がする。
身体が順一との結婚を拒んでいるようで、握った拳がプルプル震えた。
そうして、美桜が意を毛決して前を見据えた瞬間。
「美桜ちゃん、そんなに僕と結婚するのは嫌なんやね」
何か言い返したかったが、上手に嘘をつける性格ではないことを、相手にも見抜かれてしまっている。
「やったら、まあええよ。結婚は早すぎたわ。僕も一気に君との距離を縮めようとしすぎたかなって」
美桜は胸の内がぱあっと明るくなる。
(良かった、新宮部長、諦めてくれたの……?)
「そのかわし、条件がある」
「条件、ですか……?」
「ああ、美桜ちゃんにはな……」
順一の出してきた条件を耳にして――美桜の瞳は大きく揺れ動いたのだった。