冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい


 この屋敷の中で唯一の味方であるミオの姿を見て、美桜はホッとした。

「ミオちゃんなら飛べるかな? なんて……」

 その時。
 ミオの瞳がキラリと光ると、美桜の身体に飛び乗ってくる。
 かと思いきや、そのまま窓の外までジャンプした。

「ミオちゃん!?」

 敵地であることも忘れて、美桜は悲鳴を上げてしまった。
 すると、ミオはしなる枝へとしなやかに飛び移り、そのまま器用に枝を伝って幹に縋りついた後、ぴょんと地面に降り立った。
 さすが野生の生き物だ。

(感心してる場合じゃない……!)

 しかしながら、黒猫ミオは美桜のことなど忘れたかのように庭の向こうへと駆けていく。
 まるで水を得た魚のようなはしゃぎっぷりだった。

「ミオちゃん、どうか新宮部長のお母さんに見つからないでね……!」
 
 美桜はハラハラしてしまい、胸の前で両手を組むとぎゅっと力を込めた。
 ――コンコン。
 
「失礼するで」

 背後にある部屋の扉が開く。
 入ってきたのは、黒紋付をまとった新宮順一だった。
 美桜はハッと身構える。
 毛を逆立てて威嚇する猫のようにジッと相手を睨みつけた。

「そんなに警戒せんといてや。僕は兄さんみたいな大胆な性格やないんや」

 肩をすくめる順一に対して、美桜は肩を怒らせながら抗議する。

「昨日は、兄さんみたいな真似は出来ないって言ってたじゃないですか? なのにこんな風に閉じ込めたりするなんて……!」

 すると、面食らった順一が美桜を眺めながらくすくすと笑い始めた。

「美桜ちゃんはやっぱり純真無垢やね。それに、美桜ちゃんの中で恭司兄さんなら、今の僕みたいな行動しそうって思ってるんや。面白いな」

「……?」

「美桜ちゃん、同じ行動されても、恭司兄さんなら許せるけど、僕がとったら許してくれへんのやね」

「それは、だって……」

 順一の目がどことなく虚ろな気がする。けれども、すぐに微笑してきた。

「結局、似たような行動をとっても、評価される人間とそうじゃない人間がおる。仕事もそうや。昔は純粋に自分の能力が高いから評価されとるんやって思うてたけど、なんや大人になったら、周りがおべっか使うてただけなんやって……それも僕自身やなくて、僕の父親に対する忖度働かせてもうてるだけやって分かってもうて、なんか色々空しくなってしもうてね」

 美桜は相手の話を黙って聞いた。

「美桜ちゃんはどう思う? この内容、あんまり関心引けへん?」

「関心がないことはないのですが……その……答えになっているかは分かりませんが……人の好き嫌いで仕事をする人って、そんなに尊敬はできません。だけど、人って感情で生きてる生き物だから、それなりには仕方がないのかなって思っています。動物とだって合う合わないはありますし……だけど、それでわざわざ誰かを虐めたり迫害したりするのが良くないんだと思います。だから……」

「だから……?」

「おべっかを使ってくる人っていうのは、新宮部長のお父様のことがあるから新宮部長にも優しくしようとしてきているのかもしれないんですけど、結局のところは新宮部長ご自身と円満な関係を築こうとしているわけですから、それは悪いことだけではないと思うんです」

 そうして、美桜は続けた。

「あとはあんまりひどい態度の人だと、お偉いさんの息子でも優しくなれません。詐欺師だったらそれも嫌です。嘘をつく人は嫌い。……私はですけど」

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