冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
 すると、新宮部長がふっと口元を綻ばせた。

「なんや、やっぱり美桜ちゃんは面白いね。頭の中がお花畑や。平和主義すぎて、一緒におったら平和ボケしそう」

「む……?」

 あまり褒められていない気がするのだが……。
 そうして、新宮部長が美桜のそばへと歩んでくると、目の前に立ち止まった。

「ねえ、やっぱり兄さんやなくて僕にしときい。兄さん、他の女と結婚するんやで?」

「私は新宮部長とは結婚できません。それに、恭司さん本人から聞いた話ではないので信じていません」

「確かめてないん? やったら、ほんまの話かもしれへんやん」

 美桜は深呼吸をするとハッキリと答えた。

「そうだったとしても、自分の人生なので、誰と結婚するかは自分で決めます」

「もうすぐ婚約披露やで。新聞社やテレビ局もたくさん呼んでるけど、逃げ場はもうないで。君の性格なら、ここまでされたら引けないんとちゃうん?」

 順一がこちらを見下ろしてくるが、美桜はまっすぐに返した。

「……絶対にどうにかしてみせます」

 しばらくの間、二人の間にバチバチと火花が飛び散った。

「残念、どこまで行ってもダメやな、僕は。押しも弱いし、決め手にかける。誰にも好きになってもらえへん」

「……新宮部長は私が見る限り、女性達にすごく好かれていました」

「今さっきの話に近いけど、女性陣は僕の背後にある財産とか僕の見た目とか、そういうのに引かれてるだけなんや。僕自身を見てくれてるわけやない」

 恭司も似たようなことを話していたと思う。
 再会した時、社長の御影恭司とドイツで過ごしたわけじゃないだろう、と。

「やっぱり兄弟で似ていますね」

 美桜の言葉に順一が反応した。

「ん? やったら僕じゃダメなん?」

 美桜はフルフルと首を振る。

「新宮部長がダメなわけじゃありません。私は恭司さんじゃないと嫌だし……それに……」

「それに?」

 美桜は頬を赤らめながら笑顔になった。

「恭司さんには私じゃないとダメな気がするんです」

 順一が柔和な瞳を真ん丸にした後、肩をすくめた。

「どっから湧いてくるん、その自信? なんやろ、僕の思うてた美桜ちゃんとちゃうんやね。もっと守られるお姫様みたいな女の子を想像してたんやけど」

 美桜は胸を張って伝えた。

「昨今は世知辛い世の中だから、お姫様も剣を手に取って戦わないといけない時代なんですよ! といっても、別に私には取柄はないけれども……」

 順一が鼻を鳴らした。

「あほらし。そんなの男に任せとけばええやんって、僕は思うてしまうけどね。美桜ちゃんは頭がめちゃくちゃ良いわけやないけど、素直やし、老人とか子どもやら動物に好かれてええと思う」

 そうして、彼が少しだけ寂しそうに続ける。

「分かっとる。美桜ちゃんと噂になって喜んでた僕じゃあダメやったんやって。君が影で嫌がらせされているのに途中まで気づけんかったし……」

「それは私も相談しなかったからよくなかったんです」

 けれども、順一は首を左右に振った。

「それに……僕は……最低なんや。噂を知っても、これで美桜ちゃん、孤立したら、僕を頼ってくれるんやないかって……心のどこかで思うてもうた」

「……新宮部長」

「ん?」

 その時。
 扉をノックする音が聴こえる。
 使用人らしき人が部屋の中に入ってきて淡々と告げてくる。

「時間です」

 ――順一が肩を抱いてきたので、美桜はハッと身構える。

「あの、離してください」

 抗議しようとしたのだけれど……。
 順一は窓の外へと視線を向けている。

「星の瞬きが多すぎる。案外やること派手なんやね」

「……?」

 順一が何を言っているのか分からず、美桜は首を傾げてしまった。
 しばらくすると、強く引き寄せられる。

「さて、美桜ちゃん、噂をどうにかしに行こうか。僕を男にしたってや」

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