冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
「あんたたち、どんだけ恩知らずなんや! これまで私の旦那に世話になっときながら! 後で見とき!」
新宮環が叫ぶと、挙手していた人たちが慌てて手を下げてしまった。
「どちらもご子息だろう?」「血が繋がっているのが順一坊ちゃんだから」「贔屓してるんやろ」……と話は伝播していく。
(そんな……!)
美桜がショックを受けていると、恭司が声をかけてくる。
「安心しろ、想定内だ」
結果的に――両者同数となった。
順一が飄々と告げた。
「あとは残り一人手を挙げてない人がいる。つまることろ、河内家のお嬢様が鍵になるみたいやね。あの人が味方につけば、どっちが勝ちか確定や。せっかくやから来てえや、佳代子さん」
順一の元婚約者であり、恭司と噂になっている女性が河内家のお嬢様。
彼女が起立すると、まっすぐに美桜のことを見つめてくる。
(恭司さんと一昨日会っていた女性。新宮部長の話だと、恭司さんのことが好きらしいけれど……今の状況だとどっちの味方になるんだろう?)
恭司のことが好きなのならば、わざと順一のことを選ぶのではないか?
すると、河内家のご令嬢が優美な足さばきでこちらに近づいてくる。
まるで青いアヤメの花が歩いているような美しさだ。
そうして、彼女が壇上に登ってきた瞬間、美桜はハッとした。
「新宮家の奥方になる梅田美桜嬢にお尋ねしたい」
眼鏡をかけていないけれど、この時代劇がかった言い回しは……。
(まさか……!)
美桜は目を真ん丸に見開く。
「佳代、ちゃん……? どうして……」
そう。
目の前に現れたご令嬢――河内佳代子氏は美桜の同期の大河内佳代その人だったのだ。
「すまない、美桜。偽名を使わせて働かせてもらっていたんだ。私の本当の名前は、河内佳代子という。旧河内財閥の孫娘だ」
美桜は慌てて返事をする。
「ここで会うって分かっていて……だからメールですぐに会えるって書いていたの……?」
「その通りだよ」
佳代がゆっくりと頷いた。
(まさか佳代ちゃんとこんな場所で会うなんて……それに旧華族の家系のお嬢様だったなんて……! そういえば……)
「佳代ちゃんも恭司さんのことが……好きなの……?」
美桜がおずおずと尋ねると、佳代が淡々と事実を述べてくる。
「御影恭司氏には留学した際に同じ学部の出身ということで世話にはなったけれど、特別な感情などないよ。この間の日曜日、美桜に関する噂の話を聞きたいというから、家族と一緒に会ったがね。そこの腹黒御曹司が私について何と話したのかは知らないがな」