冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
そうして、佳代が順一のことを睨みつけた。
すると、順一が肩をすくめながら返した。
「腹黒御曹司ってまさか俺のこと? やめてや、美桜ちゃんに誤解されてまうやろ?」
「そんな風に誰かの前で自分を取り繕うから、美桜に胡散臭いと警戒されてしまうのだよ、新宮の坊よ」
「マジであんたの言い方ムカつくわ……ほんまに合わへん」
「同感だ」
「隠れて就職して僕の動向探ってたとかもマジで無理や」
「仕方がないだろう。知らない男と結婚したくなかったんだよ。直接本人を観察するのが早い」
「マジで無理無理、ほんまに無理」
「そっくりそのままお返しするよ」
元婚約者同士の二人の間にバチバチと火花が散っている。
(ある意味お似合いなような……?)
二人を眺めていた美桜に恭司が解説してくれた。
「あんたが退職になった噂の原因を探っていたんだ。独自調査していたら、ずっとあんたのことを庇ってくれてた仲の良い同期ってのが、どうも学生時代の後輩だって気づいてな。しかも順一の元婚約者だっていう話でな」
すると、佳代が話に入ってきた。
「御影氏には美桜に情報提供をおこなったんだ。それと、美桜に連絡をとってやってくれと話してきてな。そんなこと言われずとも美桜には連絡する気だったというのに。自分の方こそが美桜のことを知っていると言わんばかりの態度……腹立たしい」
少しだけ不機嫌そうにしていた佳代だったが、美桜に問いかけてきた。
「それで……私の大切な美桜を幸せにできる男はどっちだ? 私からしたら――二人とも生涯の伴侶としては不適切だ」
恭司と順一が兄弟揃ってうんざりした表情を浮かべていた。
「私が佳代ちゃんの選択を決めて良いの?」
「もちろんだ。そもそも美桜の伴侶選びにいちいち口を出すやり方がよろしくない。新宮のおじ様には私の方から伝えておこう。いずれを選ぶにせよ、美桜の男の趣味が悪いのは分かっているから」
美桜は恭司へと視線を移す。
「恭司さんは新宮家を継ぐのは本当は嫌ですよね?」
「ん? もちろん嫌だな。だが……」
恭司が美桜の顎に指を添える。
「あんたが俺以外の男と一緒になる方が嫌だな」
ドクン。
こんな時だけれど、心臓がドキドキして落ち着かない。
恭司を見つめた後、佳代へと視線を戻す。
「だったら、佳代ちゃん。私は……恭司さんが良い」
佳代が微笑んだ。
「そうか。だったら、私は御影殿に挙手しよう」
そうして、順一が貴賓席の皆に向かって笑顔で話す。
「ということで――過半数、恭司兄さんやったということで、美桜ちゃんの旦那さんは恭司兄さんに決定や。つまるところ、新当主の父親は恭司兄さん。皆、ちゃんとこの人に従ってな」
恭司が順一に話しかける。
「美桜のことが好きだったのにあっさりだったな」
「僕は兄さんと違って引き際は美しくありたいんや」
「そうか……」
恭司が続ける。
「最初から多数決をとらせるつもりはなかったんだ。そもそも新宮の会社の公開株の半数近くを買い占める準備を進めていたからな」
美桜は目を真ん丸に見開いた。
(それって、恭司さんがそもそも新宮グループの会社を買収しちゃいそうだったってこと……!?)
「俺から美桜を攫わなければ、ここまでやるつもりはなかったんだがな」
恭司が飄々と答えた。
すると、順一が話を継いだ。
「兄さんはやっぱり何手か先を読んでるんやね。ついでやけど……僕の持ってる株も恭司兄さんにお任せや。新宮家当主は僕には荷が重すぎる」