冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
 恭司が淡々と返す。

「本当に俺はお前の何が怖かったんだろうな」

 そうして、続ける。

「俺にも確かに新宮家に潰れてほしいと思っていたことあった。だがな……どんなに嫌いなやつらがいる場所でも、そいつらにだって仲間や家族はいるし、嫌いなやつらのことを好きだと思っている奴もいる。それを壊して全てを否定する気にはなれなかった……いや、なれなくなったんだ。だから、俺はお前を断罪する気はない。これから先の余生、好きに生きてくれ」

 恭司が美桜の身体をそっと抱き寄せてきた。

「お前と出会えたおかげで、嫌なこととも向き合って受け入れていこうって、そう思えた。ありがとう、美桜」

「恭司さん……」

 美桜はそっと恭司の胸に寄り添った。
 ――こんな緊迫した場面だというのに、彼が自分のことを思う気持ちが嬉しくて堪らない。
 その時。
 
「恭司、あんたは……」

 新宮環の唇が戦慄いた。

「あの人と似た顔で……あんたは……あの人と同じ……好きに生きろやて……?」

 美桜は彼女の異変に気付いた。

(あの人って恭司さんのお父さんのこと?)

 それとも……。
 新宮環が身体をぶるぶる震わせている。

「勝手に私に白猫の世話を押し付けて! 何も言わんと黙って! 自分の方が心が弱いくせに! 知ってたら、私は……私は家のことなんか押しのけて……結婚なんかせえへんかったのに……自分勝手や……あげく不愛想で懐かん子どもまで押し付けてきおって……『環は自由に生きて』ってドイツから手紙寄こして勝手に死んでもうて……ほんまに自分勝手なあの女にそっくりや」

 ――女。
 ということは、彼女が話しているのは、おそらく恭司の母のことなのだろう。

(新宮部長のお母さんと恭司さんのお母さんは友だちだったのかな?)
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