冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
目の前のPCの画面が再起動をはじめてしまった。
(まさか、今まで頑張って整理したデータが消えちゃった……!?)
いわゆるデジタルネイティブ世代の生まれだが、せいぜいスマホが片手で扱えたり、タッチタイピングが得意な程度で、美桜にはPCの専門知識はほとんどない。
「たぶん、バックアップがあるはず……最近の機械にないはずがない……だから、大丈夫」
ぶつぶつ呟いていると、またしても落雷が発生する。
「きゃあっ……!」
今度はかなり近くに落ちたようで、室内が真っ暗になった。
「うう、怖いよ」
ひとまずスマホを手に取ると、ライト機能を用いて周囲を照らす。
他の部署で残っている人はいないだろうか?
とりあえず部屋の中にいても埒が明かないので、廊下に出ることにする。
「大丈夫、怖くない、怖くない、怖くない」
暗くて怖いので、自分を鼓舞するつもりで、ぶつぶつ呟きながら移動する。
入り口に辿り着いたので、扉に手をかけて、開け放った瞬間。
「女の声が聞こえると思ったら……」
目の前に大きな人影がある。
ちょうど雷が落ちた。
「……きゃああああああああっ!」
美桜は悲鳴を上げると、猫が毛を逆立たせたかのように身体を震わせ驚きの声を上げる。
「騒がしいな」
(この声……)
美桜はそっと相手の顔を見る。
雷の光が相手の綺麗な顔をくっきり輝かせた。
なんと――恭司がスマホのライトを持って立っていたのだった。
(社長自らこんな場所に来るなんて……)
とはいえ、総務部に社長が来たとしても違和感はない。
美桜は色んな出来事でバクバクしてしまった心臓を落ち着けようと。何度か深呼吸をする。
恭司は、これみよがしに指で耳に栓をしながら、呆れたように溜息を吐いてくる。
「まだ残っている奴がいたとはな。居残りなんて効率が悪いから、さっさと退勤しろって、役職たちには伝えていたはずだが……総務部長に後で色々話を通さないといけない」
美桜はハッとする。
「部長や課長たちは悪くないんです。私が勝手にすぐに終わる仕事だって決めつけて引き受けたのが悪くって……」
「そんなのは分かっている。だが、ちゃんと部下の教育はしてもらわないといけない。そうでなければ、何のための管理職か分からないからな」
ドイツで出会った頃と比べると、恭司の反応は少しだけ冷淡なものに感じてしまい、美桜は少々萎縮してしまった。
背後の雷も相まって……。