冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
すると、新宮部長が悲し気に眉を顰めてくる。
「綺麗な長い黒髪だったのに、切ってしまったんやね」
「はい、そうなんです」
美桜が答えると、新宮部長がまるで哀願するかのような視線を送ってくる。
「僕のせいでごめんな」
そうして、美桜の髪の毛先にそっと新宮部長の指が伸びてくる。
(あ……)
少しだけ触れられてしまった後、美桜は咄嗟に新宮部長の手からパッと逃れた。
恭司に見られていないか、思わずキョロキョロしてしまった。
「新宮部長のせいではありませんから。ショートカットにしたことなかったから、可愛いかなって」
「ごめんな、嬉しうて、つい」
新宮部長が叱られた大型犬のような表情をしてくる。
先日のメールの件もあるし、なんだか申し訳ないけれど……。
(好きな男性じゃないのに触れられるのは怖いんだもの。私にこんな風に近づいてくるのは、子どもの頃から変わっていないけど……)
美桜がどうして良いか分からずにいると、新宮部長が眉を顰めた。
「悪かった。僕のせいで君の居場所を奪うような真似をしたのに、ずうずうしかったな」
心底申し訳なさそうな雰囲気が伝わってくるものだから、美桜は両手を胸の前で合わせながら伝えた。
「いいえ、新宮部長のせいじゃありません。私の曖昧な態度が良くなかったんです」
すると、新宮部長が首を横に振った。
「まさか僕が長期出張に行っている間に退職してしまうなんてな。君のことをご両親にも窺ったけど、新しい住所を教えてへんねんって? 心配しとったで」
ドキン。
「新宮部長、私の両親に聞きに行ったんですか?」
「ああ、そうや」
美桜の父親は新宮傘下の会社で働いているので、新宮部長とも顔見知りだ。
毎年グループ会社が一同に集まるイベントがあるのだが、四つ違いの美桜と恭司も小さい頃から面識があった。
それもあって、新宮部長は新入社員時代から美桜に優しく接してくれていたのだ。
『僕のことを覚えてくれとる? 小さい頃に時々一緒に遊んだ、順一兄ちゃんや。また兄ちゃんって呼んでくれてええ』
新宮部長は優しい。
だからこそ、大人しい美桜に対して、まるで兄のようにすごく熱心に接してくれていた。美桜だって兄のように憧れていなかったと言われれば嘘になる。だが、そのせいで、愛人関係だという噂が流れてしまったともいえる。
「この近くに私がマンションを借りていることを、両親に伝えないでいただけたら……」
「そんなことはせえへん。安心して」
新宮部長は優しそうに微笑んだ。
さすが新宮グループの御曹司だ。
爽やかな笑みが様になっている。
ふと、彼が照れくさそうにこちらを見つめてくる。
「どうしたんですか?」
美桜が尋ねると、新宮部長が嬉しそうにはにかんだ。
「実は、父から子会社を任されることになってん。次期総帥やから、その前に練習やって」
「そうなんですね、おめでとうございます」
幼馴染のような存在の新宮部長が父親の後を継いで頑張っているのは、美桜としても嬉しかった。
「もしも君が就職先を探しているんだったら、僕の秘書にでもどないや?」