冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
恭司が変わりに言葉を継ぐ。
「誰かを犠牲にしてまで――誰かを不幸にしてまで幸せは望んでいない。たくさんの奴らに囲まれて幸せに暮らしたいっていう、あんたらしいな」
彼の長い指が彼女の涙を拭ってくる。
「そうだな。だったら俺も幸せにはなったらダメな部類の人間だな」
そこで、美桜はハッとする。
「そんなことはありません! 恭司さんみたいに素敵な人が不幸になるのは絶対にダメです!」
すると、恭司が少しだけ寂しそうに笑った。
「誰かをわざわざ不幸にする気はないが、『お前には叶わない』『お前みたいに誰でもできるわけじゃない』『お前みたいに何でもできる奴がそばにいたら辛くなる』、そう言って俺のそばから去って行ったやつらは多い」
生まれてからは愛人の子だから一族の子ではないと蔑まれ、努力すればするだけお前のようにはなれないと疎まれてきた人。
(それが恭司さん)
美桜の胸がきゅうっと苦しくなった。
「俺みたいに誰かを踏みつけにして勝てって言ってるんじゃない。だが、あんたがわざとその婚約者を傷つけようとしたんじゃないのなら、それはあんたのせいじゃない。もっと自分が幸せになるのを許してやれ」
「恭司さん」
美桜の胸が熱くなってくる。
「そもそもだ。あの神経質な順一と婚約破棄できて、婚約者だって喜んでるかもしれないだろう?」
「それは……」
「自分の目で確認したわけでもないのに。悪い想像して勝手に暗くなるなよ。……なんて、あんたを傷つけるような行動をとった俺が言うべきではないかもしれないがな」
きっと恭司も順一と会って動揺してしまったのだろう。
こんな時だというのに、美桜のことを励まそうとしてくれる恭司の優しさが嬉しかった。
「いいえ、嬉しいです。ありがとうございます」
美桜は泣きながら微笑みかけた。
「それにだ。ちゃんと伝えただろう?」
恭司が美桜の頬を撫でてくる。
「俺だったら、あいつみたいに、あんたの居場所を失くさせたりしない。せっかくだからずっとここにいたら良い。俺があんたの面倒をずっと見てやるから」
しばらく見つめ合った後、二人は口づけを交わし合ったのだった。
触れるだけの口づけの後、徐々に貪り合うような口づけへと変わる。
「はあ……」
「恭司さん……っ」
互いの吐息が熱く混じり合う。
そうして、恭司が熱を孕んだ眼差しを向けてくる。
「美桜」
ドクン。
初めて彼に名を呼ばれた。
美桜は驚いて目を真ん丸に開く。
「みおって、黒猫のミオちゃんのこと……?」
「今のこの状態でそんな勘違いするとは……まあ良い。マンションに戻ってしきりなおしだ」
そうして――。
「きゃっ」
恭司が美桜のことを軽々と横抱きにした。
「帰るぞ、美桜」
美桜の頬が赤くなる。
「はい、恭司さん」