冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
離れた場所で――恭司と美桜が幸せそうにしている姿を、とある男は眺めていた。
――新宮順一だ。
普段から穏やかな人物として名を馳せているのだが、今日はすこぶる機嫌が悪かった。
「ほんま、誤算続きやね。恭司兄さん、昔から、後から出てきて良いとこどりばっかや」
――確かに親戚一同は恭司のことを新宮家の嫡男としては認めないと話していた。
だが、実際に恭司のことを一目置いていたのは間違いない。
それどころか、隠しても滲み出てくる非凡な才能に恐怖していたからこそ、迫害していた節だってある。
『順一さんも、頭は悪くないのだけど、あの愛人の子のようにずば抜けた才能の持ち主だったら良かったのにね』
『すごいわね。ちょっと聞くだけで、何か国語も喋れるみたいよ』
『体力にも恵まれている。順一ももっと身体が丈夫だったら良かったのにね』
新宮の親族たちから、陰でずっとそんな風に噂をされていたのは知っている。
それでも、幼い頃は兄のことを純粋に慕っていた。
否、むしろそんなに恵まれているのにも関わらず、一族から疎まれている恭司のことを憐れんでいたのかもしれない。
『兄さん、僕たちが飼ってた黒猫が生まれ変わってきてくれたんや。可愛い女の子』
『……誰かが生まれ変わるわけないだろう? くだらない考えはやめろ』
『そうやね。ほんまに可愛い女の子やねんけどね。三人で仲良くしたかったな』
――可哀そうな異母兄。
大人になるにつれて――兄との溝はどうしようもなく埋まらなかった。
代わりといってはなんだが、恭司と同じように可哀そうな女の子――梅田美桜と関わる時は、なんだか心が弾んだ。
『美桜ちゃん、僕の言うこと聞いてたら、おかしな男の子たちからは虐められへんから』
『順一お兄ちゃん、ありがとう』
そうして、社会人になって、美桜と再会した。
『もしかして順一お兄ちゃんですか?』
ずっとずっと小さい頃から好きだった美桜。
好きでもない女性と婚約関係を結んでいて、大々的に美桜にアピールできないのが本当に苦痛だった。他の男に悪い虫がつかないように――ずっと見張っていたのに。
たまたま自分が海外出張に行っていた際に、彼女は職場を退職してしまっていた。
「……俺の苦労が全部、水の泡や」
美桜のことを探して彷徨った。
なのに、彼女のそばには――兄の姿が――自分のことをいつだって卑屈にさせてくる存在が立っていた。
――先に好きだったのは自分だったのに。
順一はじっとりとした視線を恭司に向かって送る。
「……この泥棒猫が」