冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
連れて来られたのは、都内で開発途中のマンションのモデルルームだった。
駅近くに建ったばかりの高層ビルマンションで何フロアかある展示場に案内されていた。
美桜はピカピカのフローリングの上に立つと、子どものように目を爛々と煌めかせていた。
実際には、数階上にある日当たりの良い部屋になるそうだが、ものすごく素敵な場所だ。
「ここ、大きくて素敵です! たくさんの子たちに囲まれて過ごせそう……!」
「ペットも飼えるし、悪くないかもな」
はしゃぐ美桜の姿を見て、恭司が喜んでくれているようだった。
(なんだろう、マンションの見学だとか、まるで恋人同士……ううん、新婚さんにでもなったみたい……)
恭司がすごく優しいから勘違いしてしまいそうだ。
(告白されたりもしていないのに、勘違いしたらダメよ、美桜)
おそらく面倒見の良い恭司のことだから、美桜が将来を案じていると思って、ペットが飼える場所を一緒に探してくれているだけに違いない。
勘違いして傷つくぐらいなら、あまり期待しない方がマシだ。
(そういえば……)
すごく高い建物が建つようだが、恭司は低い階の見学を選んだ。
「偉い人って高いところが好きそうなイメージが勝手にありました。だけど、恭司さんは低い場所を選びますよね。ドイツで宿泊した先も低い建物でしたし。あちらは、景観保全のために低かったのかもしれませんが……」
美桜は恭司の顔を覗き込みながら伝えた。
「ドイツでは橋の上に立っていらっしゃいましたし、高い場所だから苦手っていうのとはちょっと違いますよね?」
すると。
「理由を聞いて、ダサいって思わないか?」
「はい、人それぞれの理由がおありだと思うので、ダサいって思うことはありません」
「そうか……重たいなってドン引きしないか?」
「……重たい話なら尚のことドン引きしません」
すると。
恭司がポツポツと話してくれた。
「昔、ガキの頃に、新宮一族の親戚から嫌がらせにあって、寒空の屋上に放り出されたことがあるんだよ。めちゃめちゃ高層ビルの屋上だったせいで逃げ場がなくて、一夜明かして凍死しかけたんだ」
美桜は想像よりも過酷な理由に絶句してしまった。
「五階ぐらいだったら、外の壁を伝ってどうにかできそうなもんだが、それより上はとにかく逃げ場がない気がしてな。飛行機なんかは別に良いが、ずっと住むんだったり、ホテルで宿泊するとかはしないようにしている。ほら、ダサいだろう?」
飄々と話す恭司に対して、美桜は首をぶんぶんと横に振った。
そうして、彼のそばに近づくと、袖をぎゅっと握って寄り添った。
「全然、ダサくないです」