好きな人が私の席に座ってたら?


中学に入学した当時、彼は1年生の中で有名人だった。

あんな完璧人間、いるわけない。

どうせ無理して完璧を作っているだけだ――

と、私は最初、彼のことが苦手だった。

そして意外にも、彼は運動部ではなく、美術部に入部してきた。

その時の美術部は、1年の部員が私1人だけ。

雑用をすべて押しつけられていた私は、「これで解放される!」と思いつつも、何だかイラッとした。

私は絵しか取り柄のない女だ。

なのに、彼に絵のポジションまで取られてしまったら、やっていられない。

私には何にもなくなってしまう……。

それなら、雑用をやっている方がまだマシかも……!

どうにかして彼を辞めさせないと……!

「美術部に入るなんて、意外だね?」

とりあえず、探りを入れるために話しかけてみた。

「10人目」

「は?」

「それ、言われたの10人目!」

……なんだ、こいつ?((ʘὢʘ))

「あっそ、」


「てかさ、絵、描く気あんの?」

あ、つい辛口になっちゃった。
まあいいや、どうせ辞めてもらうんだし。

今のうちに嫌われとこ。

「すいませんでした……!!!」

すると意外にも、弱々しい返事が返ってきた。

そして彼は、1枚の紙を私に見せてきた。

その紙には、お世辞にも上手とは言えない、
謎の猫(?)の絵が描かれていた。

「っ……笑笑、あははは!」

「いーよ……! 笑われたって!」

なんか、意外な一面……。

「俺ってさ、顔がいいじゃん?」

急に自慢始まった?(笑)

何こいつ?

「で、運動は球技以外なら得意」

「はぁ?」

「新入生テストは死ぬほど頑張ったんだよね。そしたら『ハイスペ男子だ〜』って周囲が盛り上がっちゃって、勘違いされたままでさ……」

なるほど、なんとなく事情が分かった。

こいつは「できること」だけを周囲に見られて、今さら「できない」と言い出しにくくな
ってしまったのだ。

それで仕方なく、ボロが出なさそうな美術部を選んだらしい。

「てか!美術部入っても絵描かないと変だし、描いても下手ってバレるし...」

「正直なんも考えてなかったです...笑笑」

「この学校部活変更面倒いし。」

「なーんだ……」

「ちょっとおバカで、見栄っ張りなだけか」

その瞬間、私は彼のことを人間臭くて『好きだな』と思った。

「そっちだって、あんま変わんないだろ!?」

「私は出来ないことは『できない』って周りにちゃんと言ってるもん」

「ぐぬ……」 

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