泡沫の月に幽玄の狼

そして、事件から一年が経とうとしている頃―――

突然、絃士に異動命令が言い渡された。
それは海を越えた、遠く北の方への異動だった。

しかも今まで捜査一課だったのが、交番勤務になるとの事だった。

そのタイミングで捜査担当者が代わり、なぜか"出火元は外から"という原因から放火魔の犯行という捜査だったのが、"出火元は家の中"へと代わり、火の不始末での火事として処理されてしまったのだ。

わたしは納得いかなかった。
なぜなら、信頼している絃士が出火元を見つけ、長期に渡って犯人を捜してくれていたにも関わらず、担当者が代わった途端に「火の不始末ですね。家の中から煙草の吸い殻が見つかりました」と言われたからだ。

家の中から煙草が見つかるなんて事は、有り得なかった。
両親は共に煙草は吸わず、弟は未成年者だったからだ。

それを伝えたが、新しい捜査担当者は「お父さんが煙草を吸い始めたんじゃないですか?それか、弟さんが隠れて吸っていたのかもしれませんよ?」と言い、取り合ってはくれなかった。

そして、その事を絃士に相談もしたが、絃士は「俺に力がないばかりに···ごめん」と謝るばかりだった。

絃士は何かを隠している―――
そう感じたが、絃士は何も話してはくれなかった。

しかし、わたしは絃士を信じていた。
きっといつか話してくれる時がくる。

そう思い、わたしは絃士の異動について行くつもりだったのだが、絃士はそれに反対した。

「どうして?!わたしも一緒に行く!」
「ごめん、都子···。俺に都子を守る資格はない···、いや、守れなかった。だから、都子と一緒にいる資格はないんだ」
「絃士···、なんでそんなこと言うの···?」

そして涙を流すわたしに絃士は別れを告げ、一人で北の地へ行ってしまったのだった。

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