泡沫の月に幽玄の狼
家族を失い、誰よりも愛する大切な人を失った哀しみは、絶望的で地獄のようだった。
こんなわたしには何も残されていない―――
そう思い、仕事にも手がつかない程、わたしは心身ともに衰弱していた。
そんな時にわたしの前に現れたのが、貴博だった。
わたしが哀しみを紛らわす為に独りバーでお酒に呑まれている時に「あれ?もしかして、鳳月さん?」と声を掛けてきたのが貴博だったのだ。
わたしの悲惨な姿を見た貴博は「どうしたの?何かあった?」とわたしの話を聞き、一人で歩けない程酔い潰れていたわたしを介抱してくれた。
その日をきっかけにわたしは貴博と連絡を取るようになり、貴博はわたしに優しくしてくれた。
いつも傍にいて、落ち込むわたしを励まそうとしてくれた。
そのお陰もあり、わたしは徐々に立ち直ることが出来、そして貴博の告白により恋人同士になることになったのだ。
それから今に至るのだが···―――
「でもさぁ、正直···水島とは、結婚しない方がいいよ?」
苦い表情を浮かべながら、美貴が言った。
「やっぱり···そうかなぁ?」
「"やっぱり"って思ってる時点でやめた方がいいって、結果出てるじゃん!その勘は絶対当たってるよ!」
「そういうもん、なのかなぁ···。何か分かんないけど、貴博の事···信用出来ないというか···、たまにコワいって思うことがあって」
わたしは美貴に正直に自分の胸の内を打ち明けた。
すると美貴は、大きく頷き「わかる!何か、何て言ったらいいか分からないけど···、コワいって意味わかる!」と言ったのだ。