泡沫の月に幽玄の狼
そして、その日の夜。
やはり芝浦くんの言った通り"念には念を"を実行して良かったと思う出来事が起きる。
わたしは夕飯後、一人でお風呂に入り湯船に浸かっていた。
(さっき芝浦くん、わたしに話したい事あったって言ってたなぁ···)
それが気になり、ふと思い出してはそれが何なのか考えている自分がいた。
きっと、絃士の事だろう。
絃士の事でわたしに話したいこと―――
わたしは、それが気になって仕方がなかった。
それからお風呂から上がり、リビングに戻ると、ソファーに座りスマートフォンをいじる貴博の姿があった。
しかも、貴博が手に持っていたスマートフォンは、貴博のものではなく、わたしのスマートフォンだったのだ。
「何してるの?」
わたしはそう尋ねながら、貴博に歩み寄った。
しかし貴博は悪怯れる様子もなくわたしを見上げると、「ちょっと確認してた」と言い、それからわたしにスマートフォンを返してくれた。
「確認って、何を?」
「俺以外の男とやり取りしてないかなって」
貴博はそう言って、口角を上げ不自然な笑みを浮かべた。
「そんな事しないよ」
「それはわかってるんだけどさ、念の為にね。都子には俺しか居ないんだから」
貴博はそう言うと、わたしの手を引き、自分の隣にわたしを座らせ、それからわたしの首元に口付けた。