泡沫の月に幽玄の狼
***


「鳳月、めちゃくちゃ久しぶりだなぁー!」

そう言って、テーブルを挟みわたしの対面に座るのは、高校卒業後以来に会う芝浦くんだ。
当時野球部で坊主だった芝浦くんだが、今は黒髪の短髪に当時からのガタイの良さは変わらずだった。

「久しぶりだよね。坊主じゃない芝浦くんって、何か不思議な感じ」

わたしがそう言って笑うと、芝浦くんは「そりゃあ、もう野球もやってないのに坊主はおかしいだろ〜!まあ、たまにバッティングセンター行ったりするけどな!」と言って、バットを振るふりをした。

そこへ「はい、お茶だよ〜」と温かい緑茶を運んで来てくれたのは美貴。

今日は3人で日にちと時間を合わせ、美貴の自宅にお邪魔させてもらっているのだ。

「おっ、さんきゅー!」
「今日はごめんね。美貴の家にお邪魔させてもらっちゃってさ」

わたしがそう言うと、美貴は手を横に振りながら「全然気にしないで!わたしもたまには、育児から離れてリフレッシュもしたいから!」と笑顔で言った。

どうやら息子の陽斗(はると)くんは、今日は美貴の実家に預けて来ているようだ。

「それでは早速!話そうよ、狼王子のこと!」

わたしの隣の椅子を引き、腰を掛けながら美貴が言う。
すると芝浦くんは「いまだにあいつは"狼王子"なのか!」と言って笑っていた。

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