泡沫の月に幽玄の狼
「それに、あいつにその指輪はどうしたのか聞いたら、まだ持ってるって言ってたんだよ。未練がなきゃ、そんな事しないだろ?」
「それは完全なる未練だね!」
「だろ?!」
「やっぱり都子と伊神くんはやり直すべきだ!」
「俺もそう思う!」
顔を見合い、そう言い合う芝浦くんと美貴。
そして、美貴はわたしの瞳に涙が滲んでいることに気付くと、わたしの肩を抱き、優しく「良かったね!」と言ってくれた。
「でも···、わたしは今、貴博と付き合ってるし···」
目尻に溜まる涙を指先で拭いながら、わたしはそう言う。
すると、美貴と芝浦くんは同時に「水島はやめとけ!」と声を揃えた。
「あいつ、同窓会で久しぶりに会ったけど、男の俺でもヤバいと思ったぞ」
「だよね?あの場にいたみんな引いてたからね!」
二人の説得のような強い口調に、自分自身が感じていた貴博への不信感が現実味を帯びてくる。
わたしは「やっぱり、そうだよね···」と言い、苦笑いを浮かべた。
「でもさ、あの感じだと簡単には別れてくれなさそうだよね」
「鳳月に執着してるっていうか、支配欲が凄いというか···そんな感じだったもんなぁ···」
そう言って美貴と芝浦くんは頭を悩ませていた。
二人がわたしの為に頭を悩ませてくれているなんて···―――
わたしが一番しっかりしないといけないのに。
「まあ、水島とは別れる前提として!鳳月はまず、絃士に会いに行って来たらどうだ?」
芝浦くんの言葉にわたしが「えっ?!」と驚くと、芝浦くんは「あいつ今、こっちの交番に勤務してるんだよ。青葉交番わかるか?」と言った。
「青葉交番って···、青葉公園の斜め前にある、あの?」
「そうそう!」
「そこなら、うちから···近いかも」
わたしがそう言うと、美貴は明るい表情を見せ「それなら、仕事帰りにちょっと会いに行ってみたらいいんじゃない?」と言った。
(あの交番に、絃士がいる···)
絃士が会える距離にいると知り、心の奥で大きな音がドクンと鳴る。
それは緊張と嬉しさからくる高鳴りの音だった。