幽玄の狼

わたしはその紙を掴みながら、混乱と共に身体が硬直し、動揺で手が震えた。
その震えは悲しみからなのか、それとも怒りからなのか···―――

すると、食卓テーブルに置いていたわたしのスマートフォンが一定のリズムで振動し始めた。

ハッと我に返ったわたしは手に持つ紙をスカートのポケットの中に仕舞い、食卓テーブルの傍まで早足で歩み寄ると、スマートフォンを手に取った。

スマートフォンの画面には、高校時代からの友人である白石美貴(しらいし みき)の名前が表示されていた。

「···はい、もしもし。」

わたしは先程の動揺を悟られぬよう、自分を落ち着かせながら電話に出た。

すると、電話の向こうからはいつもと変わらぬ、明るい美貴の声が聞こえてきた。

『あ、都子(みやこ)?久しぶり!元気してたぁ?!』

美貴の声にホッとしたわたしは「久しぶり、元気だよ。」と答えながら、食卓テーブルの椅子を引き、そこに腰を下ろした。

『今、電話大丈夫?』
「うん、大丈夫。どうしたの?」
『実はさ、同窓会やろうって話が出てて。都子来れる?来週の土曜日なんだけど!』

美貴の話から、わたしは「来週の土曜日?」と言いながら、壁に掛かるカレンダーに視線を向けた。

「あっ···、ごめん。来週の土曜日、仕事だ。」
『えっ!マジ?!土曜日なのに仕事あるの?!』
「普段は休みなんだけど、その日は休日出勤する予定なんだぁ。18時から取引先との会食が入ってて···」

わたしがそう言うと、美貴は『なんだぁ〜、久しぶりに都子に会えると思ったのにぃ。』と残念そうに声のトーンを下げて言った。
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