泡沫の月に幽玄の狼
「···これは?」
わたしがそう訊くと、椎名さんは写真に視線を落としたまま「よく見てみてください」と言った。
それからわたしは、その写真に顔を近付け、よく見てみた。
すると―――
「えっ···これも、貴博?」
若干写真の画質は粗いが、周りを警戒するような素振りをしながら写真に写っているその男性は、間違いなく貴博だったのだ。
しかも、写真の下に記載されている日にちは、わたしが家族を亡くしたあの火事の日付だった。
「どういう事ですか?!」
わたしが顔を上げ、そう訊くと、椎名さんはブラックコーヒーに息を吹きかけ冷ましている途中だった。
「その写真は、監視カメラの映像から画像処理をしてもらった写真です。あなたの家族が被害に遭った火事の調書と一緒に挟まっていたんですよ。きっと、証拠隠滅するつもりが処理し忘れたんでしょうね」
椎名さんはそう言うと、そっとコーヒーに口をつけ、そっとすすった。
「えっ?処理、し忘れた?―――」
「わたしの推測ですが、放火の犯人は水島の可能性が高いと思います。それを当時の担当者は気付いた。しかし、水島が犯人だと、都合が悪かった。だから当時の担当者は、あり得ない場所へ左遷、担当者を変えて事故として処理···といったところですかね」
スラスラと椎名さんの口から出てくる信じ難い言葉―――
絃士は、貴博が犯人だと気付いたから北海道へ行かされた?
貴博が犯人?わたしの家族を殺したのが、貴博?
貴博が犯人だと、都合が悪かった?
どういう事なのか、さっぱり分からない―――