幽玄の狼
Story.2
「それでは、今日はありがとうございました。」
「こちらこそ、貴重なお時間を頂きありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します。」
わたしはこの日、上司の成田チーフと共に取引先との会食で休日出勤をしており、無事に取引先との会食を終えた。
そう、今日は同窓会が開催されている土曜日だ。
「牧原部長もご機嫌だったし、上手くいきそうだな。」
取引先の牧原部長を見送った後で成田チーフが言った。
「そうですね。とりあえず、ホッとしました。」
「今日は土曜日なのに、付き合わせて悪かったな。」
「いえ、先方のご都合に合わせるのは当然の事ですから。」
わたしがそう言うと、成田チーフはニッと笑い「さすが鳳月(ほうづき)。よく出来た部下だよ。まぁ、俺の教育が良いからなぁ〜!」と冗談混じりに満足そうに言った。
「はい、いつもお世話になっております。」
わたしはそう言って、わざと丁寧にお辞儀すると、クスッと笑う。
それからわたしは「お疲れ様でした。」と成田チーフと別れ、タクシーを拾い、自宅マンションへと帰宅した。
10階建ての5階にある自宅に帰宅すると、家はまだ真っ暗だった。
(達也、まだ同窓会から帰って来てないんだなぁ。)
わたしはそう思いながら、リビングに明かりを点け、仕事着のままソファーに腰を落とし、「ふぅ。」と溜め息を漏らした。
「疲れたぁ···」
自然と零れる独り言。
今頃、達也はみんなと楽しいお酒でも飲みながら、懐かしい話に花を咲かせているのだろうか。
時頃は21時22分。
(きっと、まだ帰って来ないよね。)
わたしはそう思いながら、疲れから重たくなった身体を引き摺るように起こし、ソファーから立ち上がると、シャワーを浴びる為にバスルームへと向かった。