泡沫の月に幽玄の狼

「実はね、同窓会から帰って来た時の貴博の様子が···何かおかしくてさ。何ていうか、不機嫌だったというか···。同窓会で、何かあった?」

わたしが美貴にそう尋ねると、美貴は「あぁ〜···」と言いながら苦笑いを浮かべた。

「都子は水島と同棲してるんだもんね」
「うん」
「んー···、これは、都子に話そうかどうか、迷ってたんだけどさ···」

美貴はそう言って、複雑そうな表情を浮かべた。

「何?やっぱり何かあったの?」
「···都子は、どんな話でも、聞きたい?」

意味深な言い方をする美貴の問いに、わたしは一瞬躊躇ったが、一呼吸置いてからゆっくりと頷いた。

「うん、聞きたい」

わたしがそう答えると、美貴は真剣な表情を浮かべ、まるで自分自身も落ち着かせるように「···わかった」と言った。

「実はさ、あの日···水島が、酔った勢いで失言を···し始めて」
「···失言?どんな?」
「んー、都子に、ついての?」
「···わたし?何て言ってたの?」

わたしは自分の表情が険しくなっていくのを自覚しながら、前のめりになって尋ねた。
美貴は言いづらそうではあったが、貴博の失言について話し始めてくれた。

「まず、芝浦が都子の予定について訊いたのが始まりだったんだけどぉ···。ほら、水島は"金曜日の夜は大丈夫"って言ってたから。そしたら水島が、わざと嘘を教えたんだとか、何とか言い始めて···」

美貴の口から聞く貴博の本音に、わたしは言葉を失った。

(やっぱり、わかってて嘘ついてたんだ。でも、何でそんな事···)

わたしの反応を見て、美貴が「大丈夫?」と心配してくれる。
わたしはそんな美貴に作り笑顔を見せ、「大丈夫、平気。それで?」と話の続きを尋ねた。

「都子は俺の女だから、みんなに会わせたくなかったんだとか、都子は俺だけを見てればいいんだ、俺しか愛せないとか···、ちょっと愛というよりモラハラっぽくて、みんなドン引きしてたよ」

呆れ気味に苦笑いを浮かべながら、美貴がそう言う。
それから美貴はこう話を続けた。

「そしたらさ···、いきなり、水島の胸ぐらを掴んだ人が居て···」
「―――えっ?」
「それが···、あの"狼王子(おおかみおうじ)"だったのよ!」

美貴の言葉に、わたしの周りの時が止まったように感じた。

"狼王子"―――

それは···―――

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