きみが光るたび、淡くなる
「こっちおいで」
「あ、あぁ・・・うん」
なにか忙しなく手を動かしながら月葵にそう言われ、戸惑いながらテーブルに近づき、月葵の隣に腰を下ろす。
「・・・うわ」
月葵は鉛筆を持っていて、大量の紙に絵を描いていた。
「これ・・・すごいな」
この短時間でこんな完成度の高い衣装が描けるとは・・・才能の塊じゃないか。
「・・・ふぅ。とりあえず1パターンは全員分描けたかな。雨瑠ちゃん、来てくれてありがと。・・・アンクレット、ちゃんとつけてるね」
「・・・外し方が分からなくて」
月葵にアンクレットのことを指摘され、言い訳をするように目を逸らす。
「そっか。・・・うーん、肩が凝りそう。ねぇ、これどうかな?」
まだ色は塗られていないが、衣装から線が惹かれ、細かに色が指定してある。
しっかりとメンバーカラーが入っているし、ダンスもしやすいようにデザインしてあるようだ。
「そうだな・・・」
「えっとね、ここは一応こだわってて。統一感はあるけど全員違うデザインものにしてるんだ。リボン、ブローチに銀細工・・・可愛くない?」
「可愛いな。いいんじゃないか?・・・改良点は、まだありそうだけど」
左胸に描かれたアクセサリーは5人全員デザインが違っているものの統一感があるし、控えめなのにアイドルらしい、細かいこだわりの詰まったデザインだ。
まぁ、始まってたった数分だから、完璧でもおかしいが。
「だよね。いくつか軽く描いて、いいとこ取りのデザインにできればいいなって」
「それがいいと思う。まぁ、奇抜な衣装で目を引くか、パフォーマンスで魅せるか、だが」
思ったことをそのままいっただけだが、案外皮肉のように伝わってしまったらしい。
『パフォーマンスだけで魅せることはできないのか』と。
月葵の顔は少し複雑そうで、どこか嬉しそうに、でも呆れたように言った。
「雨瑠ちゃんってほんと責任感強いよねぇ。前はあんなに真っ赤になってたのに・・・絶対放蕩には走らないんだろうなぁ」
「ほうとっ・・・な、なにを言ってるんだ・・・!」
まさか年下からそんなことを言われるとは思わず、とっさに声を上げてしまう。
すると、月葵はクスクスと笑いながら、ゆるゆると首を横に振った。
「なんでもないよ。・・・ねぇ、これどう思う?俺全く分からないんだけどさ、雨瑠ちゃんわかる?」
デザインモードになった月葵がそう訊いてきて、ふと頭に中に兄との会話がよぎった。
『雨瑠はどんな男がタイプなんだ?やっぱりお兄ちゃんか。・・・ついに伝える時が来たのか。雨瑠、落ち着いて聞いてくれ。・・・兄妹では結婚できないんだ・・・!』
『知ってるし、ひな兄とはしたくない。・・・弱い人、かな。頼ってくれて、1人で突っ走らなくて、守りたくなる人がいい』
『お、お兄ちゃんとかけ離れてるだと・・・⁉』
相変わらず兄はシスコンだが、急に思い出した理由はそれじゃない。
『頼ってくれる人』が好きだと、私は今も思っている。
『俺に任せて』じゃなくて、『一緒にやろう』と言ってくれる人が、対等な関係を築ける人が、私の理想だ。
・・・じゃあ、その理想に当てはまる人はいた?

< 31 / 68 >

この作品をシェア

pagetop