初恋が君に届くまで
そんなある日の放課後。
練習でいつものように指揮台に立って全体を見渡していた丈は、ふらりと倒れる女の子に気づく。

(あの子だ!)

台から飛び降りて急いで駆け寄り、細い身体を抱き留める。

女の子は顔を真っ赤にしながら苦しそうな呼吸を繰り返していた。
恐らく熱中症だ。

抱き上げて保健室に運ぶと、生活指導の先生が来た。

「おいおい、綾瀬。ちゃんと休憩は取らせたのか? 今日は気温も高い。無理させたんだろう」
「すみません。今日はもう終わりにします」

あとのことを頼んで丈はグランドに戻り、練習を終わらせた。

(あの子は大丈夫だろうか)

全員が帰ったのを確認してから保健室に戻ると、保健の先生は「彼女ならさっき帰ったわよ」と言う。

「大丈夫でしたか?」
「ええ。身体を冷やして熱中症用のドリンクを飲んだら、すっかり楽になったって。自宅もここから電車で1本だし、一人で帰れるって言ってたわ」

そう言われても心配だった。

(もう少し早く戻っていれば、自宅まで送って行けたのに)

後悔しつつ、かといってどうすることもできずに自分も帰宅する。

翌日、彼女の元気な姿を見かけた時は心底ホッとした。
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